2012年３月14日＠国立競技場（東京）
○２-０ バーレーン
 
　立ち上がりから攻守にアグレッシブに仕掛けるU-23日本代表に、ロンドン五輪の出場権が懸かったグループリーグ最終戦という重苦しさは感じられなかった。
 
　キックオフからボールを支配したのは日本だ。しかし、バーレーンの堅い守備ブロックに手を焼き、さらに「少し気負いがあった」（関塚監督）という前半は、攻め急ぐシーンが散見された。
 
　それでも、攻守の素早い切り替えで上回り、ボールを失ったとしてもすぐに奪い返すなど、相手に反撃する隙を与えない。
 
　スコアレスで前半を折り返したが、ハーフタイムには「焦らず、慌てず、前半のサッカーを続けよう」（扇原）と確認。すると、持ち味である細かいパス回しでワイドに展開する攻撃に、徐々にバーレーンの守備網に綻びが見え始めてくる。
 
　そして迎えた55分、素早いサイドチェンジから原口が左サイドを抜け出しゴール前に折り返すと、トップスピードでエリア内に走り込んできた扇原が右足で巧みに合わせる。
 
　なかなかゴールが生み出せない展開に、“聖地”国立競技場には嫌な空気が漂い始めていたが、待望の先制ゴールが、そんな雰囲気を一掃した。
 
　さらにその４分後、縦へのスピーディーな展開から、東が抜け出し中央にグラウンダーのクロスを送ると、そこに待っていたのは、５試合ぶりにU-23代表に帰ってきた清武だ。
 
　この日、貫禄のプレーを見せていた背番号17が豪快にネットを揺らし、リードは２点に。引き分け以上で１位突破が決まる日本にとって、そこからの時間は、ロンドン五輪へのカウントダウンとなった。
 
　ボランチの扇原を中心に、小気味良いパスワークで相手に守備の的を絞らせず、２列目の清武、原口、そして東が、巧みにスペースに入り込み、攻撃に流動性を生み出していく。この日、出場停止の大迫に代わって１トップに抜擢された大津も、持ち雨の馬力を活かしたプレーで押し込んでいく。
 
　時折、相手のカウンターを受けそうになるが、そこは抜群の危機察知能力を発揮し、山口がシャットアウト。苦し紛れのロングフィードは、鈴木と濱田のCBコンビが完璧にはね返した。
 
　さらに、終盤には途中出場の永井と齋藤が、最後まで攻撃的な姿勢を見せ、前線からのチェイシングで相手に反撃の糸口を与えない。ロスタイムには、今予選の終盤、怪我に苦しんだ主将の山村がクローザーとして登場し、試合を締めくくった。
 
　迎えたタイムアップの瞬間、関塚監督はベンチ前でガッツポーズを繰り返し、ピッチ上では、倒れ込む者、喜びを噛みしめる者、涙を流す者、それぞれが喜びを表現し、やがてひとつの歓喜の輪が出来上がる。
 
　ロンドン五輪への想いが、結実した瞬間だった。
 
（週刊サッカーダイジェスト2012年４月３日号）