【日本代表/エリア別検証】大胆さに欠けたボランチが停滞を招いた一因に

カテゴリ:日本代表

五十嵐創(サッカーダイジェスト)

2015年06月18日

気の利いたプレーができなかった両SB。

クロスの精度もさることながら、SBの酒井宏(写真)や太田は動きの質にも課題を残した。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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【エリア別検証/最終ライン】
 シンガポールを相手に、まったく危険な場面を作らせなかったのは評価できるだろう。カウンターの芽をしっかりと摘み取り、不要なファウルをせずにセットプレーからのピンチもゼロ。日本がバランスを崩して前がかりになった終盤も、「多少のクオリティの差があるかなと思いました」(吉田)と余裕を持って対応している。力の差が歴然とした相手でも、1試合のうちに一度や二度はピンチを迎えるものだが、それすら与えずに抑え切ったのは成長を感じさせる部分だ。
 
 一方で、攻撃では大いに不満が残った。なかでも、単調なクロスを撥ね返され続けたSBは、不発に終わった前線同様に不甲斐なかったと言っていいだろう。端的に言えば、SBが単純なクロスマシーンになってしまったことが、攻撃の停滞を招いたひとつの要因だったからだ。
 
 あれだけ押し込んでいた展開であれば、SBの仕事の質を変化させるべきだったのではないか。例えば、前線でタメができた時に、大外からエリア内に進入する動きを加えても良かった。
 
 後半も半ばを過ぎると、前線の4枚がべったりと相手の最終ラインに張り付き、ボランチは配球役として中盤に残っていた。つまり、後列から飛び出す選手が、極めて限られる状況が続いていたわけだ。であれば、比較的マークの緩いSBが最終ラインの裏に飛び出し、揺さぶりをかけるのが常套手段だろう。しかし、そうしたシーンは、本田の浮き球パスを酒井宏が折り返した73分の場面くらいで、気の利いたプレーがほとんど見られなかった。
 
 右SBの酒井宏がワールドカップ予選で先発したのはザッケローニ体制を含めて3試合目で、左SBの太田に至っては今回が初。アジア予選独特の緊張感が足かせになったのかもしれないが、ふたりとも評価できるパフォーマンスを披露できなかったのは確かだ。
 
 いずれにせよ、すべてのセクションになんらかの課題を抱えたシンガポール戦の引き分けを、チーム全体として重く受け止めるべきだろう。前線の連係不足も、効果的な配球ができなかったボランチも、攻撃に変化をつけられなかった最終ラインも、すべてはチームとしての意思統一が希薄だったことに行き着く。
 
 誰が起点になり、どうやって引いた守備を崩すのか。日本が抱える積年の課題に、アジア予選に初めて挑むボスニア・ヘルツェゴビナ出身の指揮官は、解答を示せるのだろうか。
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