全体を通して見れば、宇佐美の出来は総じて低調でノーインパクト。
滑り、外し、合わず――。シンガポール戦に先発した宇佐美のパフォーマンスを総括すれば、その三言で足りるだろう。前半は続けざまに転び、シュートは枠を外れ、左SB太田との呼吸も今ひとつ合わなかった。
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6月11日の国際親善試合・イラク戦に続いて先発の座を勝ち取った宇佐美は、左MFで78分までプレー。細かいパス交換による中央突破、ドリブルで仕掛けてからのクロスなどで時折存在感を放ったものの、全体を通して見れば、総じて低調な出来に終わった。
試合後、疲労について問われた宇佐美は「特に身体の重さはなかった」と語り、続けてこう振り返った。
「前半は滑るなと思って(後半はスパイクを)変えたけど、全体的にシュートが枠に飛ばなかった。ああいう場面でこじ開けるプレーをしないといけなかった。縦を使いながら、幅も使えていたと思う。でも、そこからの精度の問題。もう少し枠内に(シュートが)行っていれば入るシーンもあった。『たら』『れば』を言ったらキリがないけど、サッカーの難しさを感じた試合でもある」
宇佐美にとっては、この試合が自身初のワールドカップ・アジア予選。周囲の期待を一身に背負うなか、「初めてのワールドカップ予選でも緊張はしなかった」と口にした一方、「これがワールドカップ予選だというのは少なからず感じた。間違いなく大差で勝たないといけない相手だった」と肩を落とした。
チームにとって前半最大の誤算は、左サイドの機能不全だった。SBの太田と左で縦関係を築くも、互いの役割が曖昧で、ともに中途半端なプレーに終始。ふたりの連係でサイドを深くえぐる場面はなく、左サイドが大きなブレーキになった感は否めない。
「連係で崩す場面が、なかなかないという話は(太田)宏介くんともしていた。自分がボールを持って仕掛けるか、宏介くんがアーリークロスを上げる展開になっていた」
後半に入ってからふたりの距離感と動き出しが若干改善され、左サイドから崩す回数が増えたものの、及第点の域には程遠い内容。宇佐美もそれは十分に痛感しており、「(マークを)剥がして、そこからどうするか。その後が続かなかったというのは、正直感じている」と、今後の課題を口にしている。
結果的にハリルホジッチ監督の期待を裏切る形となり、試合後はサポーターの辛辣なブーイングを浴びるなかで視線を地面に落とした。今後、宇佐美が“日本のエース”として確固たる地位を築くためには、こういうゲームでこそ輝きを放たなければならない。
「今日は申し訳ない結果でしたが、この試合を教訓にしたい」
この日はインパクトを残せなかったものの、この経験は”日本の新エース候補”にとって大きな糧となるに違いない。