「今シーズンの南葛SCの目標は関東リーグ昇格です。東京都1部リーグ戦の優勝ではなく、関東リーグ昇格。昨シーズン、南葛SCは東京都1部リーグで優勝しても昇格できず、2位のCriacao Shinjukuが昇格しました。リーグ戦での対戦は南葛SCが勝っていても、Criacao Shinjukuが昇格する。これが今のレギュレーションです。我々は今、昇格を見据えてのチーム作りをしています。リーグ戦だけであれば、それに応じたチーム作りがあります。でも、今のレギュレーションで昇格するには、関東社会人サッカー大会で土日連戦のトーナメントを勝ち抜かなければなりません。そのためには選手11人だけでは戦えないので、選手全員を底上げするアプローチも必要になってきます」
柴村選手は藤枝MYFC時代、JFL昇格をかけて全国地域サッカーリーグ決勝大会を戦った。この時のレギュレーションは3日3連戦。その全ての試合にフル出場した経験から、いかに昇格トーナメントの連戦が過酷か、身をもって知っているのだ。
確実に上位リーグへの昇格を狙うなら、付け焼き刃でも、ましてや行き当たりばったりでもいけない。ここにリーグ戦を戦いながら成長も促される難しさがある。当連載で福西監督も語っていた「勝利」と「成長」の同時追求だ。
「もちろん結果もひとつの指標になりますが、結果だけを見ていると見えにくくなる部分もあります。結果にはあらゆる要素が関わってきますから。それこそ、判定ひとつで変わってくることもある。結果に右往左往していると、取り組んでいることとの整合性がとれなくなってチームは混乱してしまいます。勝っても慢心してはいけないし逆もまたしかり。勝ったからといって全てが良かったわけでもないし、負けたからといって全部悪いわけでもない。何が良くて、何がいけなかったかを、毎試合きちんと整理して見極めアプローチしながら階段を上がっていくしかないんです」
手応えは、ある。
「皆頑張っているので、少しずつ成長してきている実感はあります。そこに結果がついてくるともっといいんですけど。リーグ戦の結果より昇格という結果を追い求めてはいますが、とはいえリーグ戦で3位までに入れなければその後の昇格トーナメントもありませんから」
勝利だけを追求すれば昨シーズンの二の舞になる可能性が否めない。成長だけを追求すれば昇格トーナメントに辿り着けないかもしれない。勝利と成長をバランスよく果たすためには――。厳しいミッションの中で、それでも柴村選手兼コーチの目には光明が見えていた。
(第3回に続く/次回の掲載は9月5日の予定です)
取材・文●伊藤 亮
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