東京都リーグ１部は４節を終えて、南葛SCは２勝１分１敗の６位につけるが、チーム強化を担う岩本義弘ゼネラルマネージャー（GM）は、今季の目標である関東リーグ２部昇格とともに、クラブとしての大きな夢に向かって歩みを進めている。
 
　南葛SCのJリーグ入りの実現へ、必要な要件を満たすべくあらゆる方面へ働きかけを行っているのだ。とりわけ、クラブの象徴ともなる新スタジアムの建設に関しては、急ピッチで構想を具体化させ、実現への道筋を描いているところだ。
 
　もちろん、それにはクラブとしてもさらなるスポンサーの獲得などで予算規模を拡大し、安定した経営基盤を作る必要がある。それが、今後のクラブ強化や早期のスタジアム建設へとつながっていく。岩本GMのインタビューシリーズ最終回は、南葛SCの未来について話を伺った。
 
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　今年、南葛SCはトップチームを株式会社へ移行。これまでクラブの後援会会長という立場だった漫画『キャプテン翼』の原作者、高橋陽一氏を同社の代表取締役とした。岩本GMは、株式会社化した理由を次のように話す。
 
「後援会のトップって、ちょっとふわっとしたポジションですよね。葛飾区に対しても、スポンサーに対しても高橋先生がオーナー兼社長をやっているチームなんだって明確にした方がよりJクラブを目指すためには良いだろうというのが理由のひとつ。
 
　あとは、Jリーグはいまトップチームを株式会社化することを推奨しているので、そこも見据えています。今シーズン中にはJリーグ百年構想クラブへの申し込みを申請しようと思っていて、どうすれば認定してもらえるのかリーグ側にもヒアリングしたうえで、今の形に移行しています。コストがかかる部分もありますが、行政を動かしたり、スタジアムを作ったりするうえでもJリーグのお墨付きをもらうことは本当に大事なので」
 
　さらに現在、プロ契約の選手が約半数を占めており、サラリーを支払っていくにあたって既存のNPO組織では限界があったことなども、株式会社化への契機となった。こうしてクラブ組織をアマチュアからプロ仕様に整備していくと同時に、Jリーグ入りへのもうひとつの大きな要件となるスタジアム問題にもすでに着手している。
 
「スタジアム建設についても、先日の葛飾区議会で、正式に代表質問で、スタジアムに関しての発言がされました。区議会の議事録にちゃんとスタジアムの話が掲載されるというのは、大きな第一歩だと考えています。そういうところから一歩一歩ですね」
 
　スタジアムに関しては、クラブ代表の高橋氏も「理想は欧州のスタジアム。試合を開催する時だけでなく、平日でもみんなに来てもらえるようにしたい」とプロフィットセンターとしてのプランを語っているが、実際に様々な企業や葛飾に縁のある著名人とのコラボなども構想として挙がっているようだ。

「やはりショッピングモールなどの商業施設を併設するとかしないと、東京でペイするのは難しいでしょうね。同時にスタジアムには葛飾区の全部を入れようと思っていて、例えば『キャプテン翼ミュージアム』でいろんな原画や作品に関するものを飾ったり。高橋先生は漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の秋本治先生とも交流があるので、『こち亀ミュージアム』を作ったり。あとは寅さんを作られた映画監督の山田洋次さんプロデュースの映画館を作って、そこに映画人を養成する機関を立ち上げるのもいいんじゃないかと。昨年、別件で僕が山田洋次さんに取材させていただいた時に、映画人の育成について、かなり熱く語っておられたので。それから、いま『キャプテン翼』のカードゲームを作っていただいているタカラトミーさんも葛飾区の大手企業なんですが、『リカちゃん』や『プラレール』『トミカ』などを活用した、子どもが体験型で遊べるようなテーマパークを作りませんかという話もしているんです」
 
　他にも様々なプランが浮上しているようだが、そこには単にサッカースタジアムを作るというだけでなく、「葛飾区の人たちに愛される施設を作りたい」という想いがあるという。そして、こうした話を実現するためにもピッチで結果を出すことが求められるわけだ。岩本GMも「そうじゃないと、なかなか話が盛り上がりませんからね」とチームへの期待を込めて語った。