ヴェントゥーラの責任だけで済む単純な話ではない。
結果的にヴェントゥーラは、イタリアが擁する戦力を最大限に活用しその持ち味を引き出すスタイル、システム、戦術を確立することもできず、かといって対戦相手を研究してその弱点を突くような対応策を準備して戦うこともできなかった。
自軍の戦力にも敵の戦い方にも関係なく、ただ自らが長年のキャリアを通して確立した戦術の枠組み(自陣でのポゼッションから中盤を省略してサイドに展開する組み立て、2トップによるパターン攻撃など)に執着し、それが通用しない状況でも頑なにこだわり続けて自滅したと言うしかない。
予選のグループ1位を賭けたスペインとのアウェー直接対決(9月2日)に、無謀とも言える4-2-4で臨んで0-3の完敗を喫して以降は、チームとの信頼関係にもひびが入っていたという内幕話も、敗退が決まった後になってマスコミに流出し始めている。
戦力的に見れば、スペインを破ってグループ1位となるほどのレベルにはなかったとしても、スウェーデンに勝てないほどクオリティーの低いチームではないはずだ。にもかかわらず、その力を引き出せなかったどころか、逆に削ぐような形で最も重要な2試合を戦い、このネガティブな結末をもたらしたという点において、敗退の最大の責任が指揮官たるヴェントゥーラにあることは否定のしようがない。
しかしもちろん、イタリアの敗退はヴェントゥーラ1人にその責任を押し付けて済むほどに単純な問題ではない。2006年のドイツW杯優勝を頂点として、そこから現在まで10年間の歩みは、少なくともA代表レベルにおいては凋落の一途でしかない。その原因がどこにあるのかは、後編で改めて整理することにしよう。
文:片野道郎
【検証】イタリアはなぜ世界王者から予選敗退まで凋落した? 後編:連盟と育成の機能不全
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。ジョバンニ・ビオ氏との共著『元ACミラン専門コーチのセットプレー最先端理論』が2017年2月に刊行された。
自軍の戦力にも敵の戦い方にも関係なく、ただ自らが長年のキャリアを通して確立した戦術の枠組み(自陣でのポゼッションから中盤を省略してサイドに展開する組み立て、2トップによるパターン攻撃など)に執着し、それが通用しない状況でも頑なにこだわり続けて自滅したと言うしかない。
予選のグループ1位を賭けたスペインとのアウェー直接対決(9月2日)に、無謀とも言える4-2-4で臨んで0-3の完敗を喫して以降は、チームとの信頼関係にもひびが入っていたという内幕話も、敗退が決まった後になってマスコミに流出し始めている。
戦力的に見れば、スペインを破ってグループ1位となるほどのレベルにはなかったとしても、スウェーデンに勝てないほどクオリティーの低いチームではないはずだ。にもかかわらず、その力を引き出せなかったどころか、逆に削ぐような形で最も重要な2試合を戦い、このネガティブな結末をもたらしたという点において、敗退の最大の責任が指揮官たるヴェントゥーラにあることは否定のしようがない。
しかしもちろん、イタリアの敗退はヴェントゥーラ1人にその責任を押し付けて済むほどに単純な問題ではない。2006年のドイツW杯優勝を頂点として、そこから現在まで10年間の歩みは、少なくともA代表レベルにおいては凋落の一途でしかない。その原因がどこにあるのかは、後編で改めて整理することにしよう。
文:片野道郎
【検証】イタリアはなぜ世界王者から予選敗退まで凋落した? 後編:連盟と育成の機能不全
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。ジョバンニ・ビオ氏との共著『元ACミラン専門コーチのセットプレー最先端理論』が2017年2月に刊行された。