オランダ発!サッカーIQを「見える化」するデジタルソリューション「NeurOlympics」とは?

カテゴリ:特集

伊藤 亮

2021年10月20日

NeurOlympicsを実際に行なったFC琉球アカデミーの声から見える魅力と課題

「NeurOlympics(ニューロオリンピックス)」の認知診断テストに取り組んだFC琉球U-15の選手たち。中央がアカデミーダイレクター兼U-15監督である石田学氏。写真提供:FC琉球

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認知診断テストに取り組むFC琉球U-15の選手。石田監督によれば、ある特徴的な傾向が見て取れたという。写真提供:共同通信デジタル

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 世界には、最先端のデジタルツールで新たな可能性を掘り起こしている現実がある。NeurOlympicsもその一つだ。だが、この大きな可能性を秘めたツールを使いこなすとなると、また別の話になる。せっかく選手のサッカーIQを可視化したとしても、フルに活用できなければ机上の空論、宝の持ち腐れになりかねない。

 じつは、Jリーグのクラブでいち早くNeurOlympicsを試したクラブがある。J2のFC琉球のアカデミー部門だ。アカデミーダイレクター兼U-15監督である石田学氏は率直に感想を語る。
「選手たちには事前に説明していたので、興味をもって取り組んでくれたと思います。結果は、――もちろん選手個々によって印象は異なりますが――意外な結果が多か印象の方が強くて。この認知診断テストのスコアと実際のピッチ上でのプレーとの間にギャップを感じた選手もいました。傾向として座学の方が得意な選手ほどスコアが高く、プレーの方が優れている選手は軒並み低かったんです。初めてのテストに対する慣れの個人差もありますし、1回のテストだけでは数値を鵜吞みにできないな、と感じたのが正直なところです」

 パソコンの画面上で行なったテストの結果をそのままピッチ上に当てはめるには、イメージが乖離しすぎているというのは現場の本音だろう。ただ、石田氏は「でも――」と言葉をつなぐ。
「我々のアカデミーでも状況に応じて認知・判断していくスキルは重要視しているキーポイントです。でも、その素質を評価するうえで時にスタッフの主観が入りかねません。そこで客観的かつ効果的に情報が得られるのであれば、育成を進めていくうえで、さらに選手の成長を促す意味でプラスになってくる。そういう点では非常に興味深いです」

“もしきちんと活用できるようになれば”強烈なトレーニングのひとつになることは間違いない

 石田氏自身、育成世代の時はアルゼンチンでプレーし、指導者になってからも中国やドイツで監督やコーチを歴任してきた。だから、世界の中における日本サッカーの特質のようなものを肌で感じ取っている。

「振り返ると、自分が見てきた国の選手はどの年代であろうと、考えていることを言語化して伝え合って議論できる能力がありました。それは国民性や性格を考慮したとしても、サッカー選手として絶対的に必要な素養だと考えています。でないと、たとえフィジカルやテクニックで優れていても、上のレベルへ上がって壁に当たった時に乗り越えていけない。そうならないための頭の整理の仕方やパーソナリティを我々アカデミーのコーチが引き出したり、伸ばしたりしていくのが大きな仕事のひとつと感じています」

 今はまだ、NeurOlympicsは参考にはなっても使いこなせる具体的な方法が見出せない。しかし、将来的に適切な方法論を確立できれば――自分が果たしたい育成指導の強力な後押しになってくれるとも感じている。

「普段のトレーニングだけではカバーしきれない部分へのアプローチや、客観的に自己分析ツールにもなるでしょうし。とかくチーム全体をフォーカスしがちな中、個を輝かせる能力の育成にも役立つでしょう。今は以前と比較しても比べ物にならないくらいテクノロジーが入り込んできています。それを避けるのでなく、今回のように興味があったらまずやってみるべきかと。そこで感じたことを議論してまたチャレンジしていく先に、新しい意見や見識が出てくる。我々も指導の幹はしっかり据えつつ、肉付けや刺激になることはどんどんチャレンジしていきたい。もしきちんと活用できるようになれば、強烈なトレーニングのひとつになることは間違いないと思います」
 
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