現場に携わる者として求めるのは、NeurOlympicsの“日本における”具体的な成果だろう。欧州で結果が出ていることは前述したが、それだけでは信じきれない事情がある。
欧州では、じつに75以上のクラブがアカデミーに年間500万ユーロ(約6億円)を費やしている実情がある。さらに選手一人当たり平均1.5~3万ユーロ(約190~370万円)のコストをかけているという計算もある。日本でアカデミーにここまで投資しているクラブはないだろう。
では、なぜ欧州のクラブはアカデミーに多額の費用を注ぐのかといえば、それは「投資」というビジネス的な認識が常識化しているからだ。
自分たちのアカデミーからビッグクラブで活躍する選手を育てる。そうすれば、「移籍金」の他に「育成補償金」「連帯貢献金」のリターンも見込める。有名選手を輩出することでブランディングも図れる。
NeurOlympicsは年間契約で500回のテストで約480万円、250回のテストで約240万円というパッケージだ。所属選手の定期的なテストだけでなく、ユースセレクションでも利用されている。この費用をどうとらえるか。
これが欧州の場合だと、ROI(投資利益率)を高めてくれるツールとしてお手頃価格に受け取られる。翻って日本の場合だと、アカデミーにかけられる予算は限られているうえ、効果測定も最低2~3年は待たなければならない。経営状況はクラブによりけりだが、正直足踏みしてしまうのが実情だろう。もしコストをかけるならより、成功する確証がほしいと考えるのも無理はない。
だが一方で、欧州を中心とする世界では育成世代へどんどん投資し、優秀な選手を育ててスターダムへと押し上げている。好む好まざるにかかわらず、日本のサッカーは否応なく、この世界のサッカーの潮流に組み込まれている。NeurOlympicsを日本に持ち込んだ前田氏が言う「自分事化できるか」というのは、つまりはそういうことだ。
NeurOlympicsがこれまでの日本の育成に革命を起こすほどの魅力を秘めていることは間違いない。そしてもし、使いこなし結果をもたらすことができたクラブは――先進的な育成メソッドの第一人者になれる。
おそらく個人レベルで、そして選手レベルで己のサッカーIQ値に興味を抱く人は少なくないはずだ。共同通信デジタルでは、そういった個人のニーズに応える形として、必要な回数だけ提供するなど柔軟に対応していく方針。また、12月中旬頃に欧州での活用事例などを紹介するウェビナーの開催を予定している。
サッカーIQを可視化する。この能力に気付き、活かし、最初に結果を出す日本人は――いったい誰になるのだろうか。
取材・文●伊藤 亮
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