司令塔のコンティは勝利への可能性を感じ取っていた「ブラジルの守備の最大の欠点は…」
そしてわずか1分後に均衡が破れる。右サイドで守備のカバーもしていたコンティがドリブルから左へ振ると、駆け上がるカブリーニがそのままクロスを送る。ロッシは一度マークするルイジーニョに身体を寄せたが、すぐにファーポストへと逃げる。あとは正確なクロスを頭で丁寧に合わせた。
カウンターの起点となったコンティは、すでに勝利への可能性を感じ取っていた。
「ブラジルの守備の最大の欠点は、目の前に広大なスペースがあっても上がって埋めようとしないことだった。スペースを活かすことにかけて我々アズーリはマエストロ(達人)だ。象徴的だったのが先制点のシーン。カブリーニがクロスを上げる時も、ロッシがファーサイドへ流れた時も、まったくのフリー。ブラジルがスペースを閉じる作業をやっていない証拠だった」
再びベアルゾット監督の証言である。
「確かに技術面で我々はブラジルに大きく劣っていた。だからそれを補って余りある戦術を採らなければならなかった。一方ブラジルは、イタリアが相手なら簡単にボールが持てるはずだと深過ぎる自信を持っていたに違いない。ブラジルは2次リーグを突破するためではなく、イタリアを完膚なきまでに叩きのめすためにピッチに立った。そのためには、出来るだけ多くの選手を攻撃に割く。それが彼らの哲学なのだ」
カウンターの起点となったコンティは、すでに勝利への可能性を感じ取っていた。
「ブラジルの守備の最大の欠点は、目の前に広大なスペースがあっても上がって埋めようとしないことだった。スペースを活かすことにかけて我々アズーリはマエストロ(達人)だ。象徴的だったのが先制点のシーン。カブリーニがクロスを上げる時も、ロッシがファーサイドへ流れた時も、まったくのフリー。ブラジルがスペースを閉じる作業をやっていない証拠だった」
再びベアルゾット監督の証言である。
「確かに技術面で我々はブラジルに大きく劣っていた。だからそれを補って余りある戦術を採らなければならなかった。一方ブラジルは、イタリアが相手なら簡単にボールが持てるはずだと深過ぎる自信を持っていたに違いない。ブラジルは2次リーグを突破するためではなく、イタリアを完膚なきまでに叩きのめすためにピッチに立った。そのためには、出来るだけ多くの選手を攻撃に割く。それが彼らの哲学なのだ」
イタリア先制は、世界中のファンを驚かせたに違いない。だがブラジルの失点は珍しいことではなかった。1次リーグでも開幕からソ連戦、スコットランド戦と先制を許しながら、圧倒的な攻撃力で鮮やかに逆転している。まだブラジル側にまったく焦燥はなかった。
(※なおイタリア代表スタッフのインタビューは、現地在住の宮崎隆司氏に託して実現したものです)
文●加部 究(スポーツライター)