【名勝負の後日談】ドーハの悲劇~最後に蹴らせたのは贖罪なのか…? ラモス瑠偉が感じた疑問

カテゴリ:連載・コラム

加部 究

2020年04月16日

短期集中連載『名勝負の後日談』vol.1~アメリカW杯アジア予選、ラモスが気づいていた予選の最強国とは?

最終戦の相手、イラクに対してラモスは大きな警戒心を抱いていたが……。(C) Getty Images

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 歴史に残る名勝負、名シーンには興味深い後日談がある。舞台裏を知る関係者たちが明かしたあの日のエピソード、その後の顛末に迫る。(文:加部 究/スポーツライター)

――◆――◆――

 中東は日本人にとって、そしてワールドカップは日本サッカー界にとって未知の世界だった。

 1993年10月、日本代表がカタールの首都ドーハでアメリカ・ワールドカップ最終予選を戦うことになり、JFA(日本サッカー協会)は報道陣を集めて説明会を行なった。約1年半前のダイナスティカップ(東アジア選手権=中国開催)を取材したのは2人だったそうだが、広い会議室の席はドーハに同行する報道陣で埋まった。

「現地にはほとんどレストランもないし、タクシーをつかまえるのも難しいです」
 未知の国に2週間の滞在になる。我々は手分けをしてこれでもかとばかりトランクに食料を詰め込んだ。

 この年、Jリーグが開幕し、前年にはハンス・オフトが外国人として初めて日本代表を率いることになった。サッカーを取り巻く環境は劇変した。オフトが就任して、日本代表は東アジアとアジアカップを立て続けに制し、Jリーグのスタジアムはどこも満員になった。

 しかし空前のブームの中で、延長VゴールやPK戦を含む試合を重ねる選手たちには、必然的に疲労が蓄積していった。一方僕らフリーランスの報道陣は、中継地の空港で一夜を明かし長旅の末に決戦の地に降り立つが、そこにはレストランもタクシーも溢れていた。

 後に柱谷哲二主将は振り返っている。
「全てが足りなかった。経験も技術も。ただ絶対に気持ちで負けることはなかった」

 要するに「ドーハの惜敗」は、改めて我々がそれを噛み締める機会となった。
 例えば各国の初戦を終えた段階で、すでにラモス瑠偉は気づいていた。
「イラクが強い、しかも半端ない」

 だが翌年の本大会の開催国はアメリカだった。敵対国のイラクを迎え入れたくない思惑があったのか、最も質の高いプレーを見せるチームに逆風となる笛ばかりが鳴り続けた。つまり見方を変えれば、日本が最終戦に残していた相手は最強国だった。ところが1分け1敗の崖っぷちから、宿敵韓国を下し北朝鮮にも快勝したことで期待値ばかりが高まる。そんな浮足立つムードを察知したからこそ4戦目を終えたラモスは不機嫌だった。

「まだ終わってない…」
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