Jリーグ誕生を促した雨中の中国戦――晩年に遺された指揮官の舞台裏証言録【名勝負の後日談】

カテゴリ:連載・コラム

加部 究

2020年06月01日

中国とのアウェー戦を1-0で制した日本。翌週にホーム戦ができていれば…

アウェーでの中国戦で決勝ゴールを決めた原。Jリーグ副理事長の現在は、サッカー界のご意見番として活躍する。写真:サッカーダイジェスト

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 メンバー構成も含めて試行錯誤が重なった。

 当初ドイツ帰りの奥寺康彦を中央で起用し、左ウイングバック(WB)には別の選手を想定していた。だが奥寺が所属していたヴェルダー・ブレーメンのオットー・レーハーゲル監督に相談すると言下に否定されてしまった。

「奥寺はドイツ人以上に上下動を繰り返せるし、何度でもピンポイントのクロスを送れる。だからWBが出来るんだ」

 一方で国内プロ1号の木村和司が不調に陥ったことも、石井を悩ませた。
「目に見えて動きが減り切れもなくなった。でも堅守を軸にしたチームでは、セットプレーが生命線になる。直接FKだけではなく、ヘディングが強い原(博実)に合わせるパターンもある…」

 結局苦渋の思いで木村を外した。もし少しでも悔いを残す決断があったとすれば、そこだった。

 それでも五輪最終予選は理想のシナリオで進んだ。4年前の五輪予選で大敗したタイを1-0(ホーム)、0-0(アウェー)と2戦ともに完封し、いよいよ中国との決戦にコマを進める。

 そして10月4日、6万の大観衆が詰めかけた広州では、中国の怒涛の攻撃を耐え抜いた。本来攻撃力を持ちながら守備に専念した堀池巧が証言している。

「これぞアウェーという感じで押されっ放しでした。クロスを上げられ、競ってセカンドボールを拾ってクリアー。その繰り返し。とにかく苦しかった。でもそのうちに守りのリズムが出て来たんでしょうね」

 防戦一方だった日本は、21分に水沼貴史のFKを原が頭で合わせて先制。これが決勝点となった。石井には、旧知の間柄だった中国の高豊文監督の慌てぶりが強く印象に残った。
「普段はとても冷静で温厚な方なのに、試合を終えて挨拶に行くと顔を真っ赤にして気もそぞろでした」

 さらに「もし翌週東京で再戦だったら、とても建て直しは出来なかったな」と頭に過った。

 しかしアウェー戦から3週間の猶予は、微妙に両国の状況を色分けした。中国は改めて日本をじっくりと研究し、心身ともに回復を図ることが出来た。逆に日本は原との2トップを予定していた松浦敏夫、さらには3バックの一角に計算をしていた信藤健仁が故障で離脱した。
 

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