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【追悼コラム】選手、監督として「カルチョ黄金時代」の礎を築いたチェーザレ・マルディーニの生涯

カテゴリ:連載・コラム

片野道郎

2016年04月07日

「カテナッチョはインテルのサッカーだ」

監督と主将として、息子パオロ(中央)とともに98年ワールドカップに出場。PK戦の末、ベスト8で開催国フランスに敗れた。(C)Getty Images

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 そして96年、イングランドでのEURO96でグループステージ敗退を喫し、その後のワールドカップ予選でも不振に陥ったアリーゴ・サッキ監督が事実上解任される形で去ると、後任としてA代表監督に昇格する。キャプテンは息子パオロだった。
 
 予選でイングランドにグループ首位の座を奪われ、ロシアとのプレーオフを経て出場した98年大会では、82年の優勝メンバーでもある35歳のベテラン、ジュゼッペ・ベルゴミをリベロに起用した3-5-2でベスト8まで勝ち上がった。準々決勝では、優勝国フランスにPK戦で惜敗。この試合を最後に代表監督の座をディノ・ゾフに譲ってFIGCを去った。
 
 その後、古巣ミランにスカウト責任者として25年ぶりに復帰。00-01シーズンには、アルベルト・ザッケローニの解任を受けて最後の3か月だけ監督として指揮を執った。この時には、ミラノ・ダービーでインテルを6-0で下すという記録的な勝利を挙げている。その翌年、パラグアイ代表を率いて戦った02年ワールドカップ(ベスト16でドイツに敗退)が、監督として最後の仕事になった。
 
 監督としては、恩師ロッコの影響を強く受けており、伝統的なイタリア的サッカー観に根ざしたディフェンス重視のスタイルを貫いた。90年代のイタリアは「アリーゴ・サッキのミラン」の影響もあって、マンツーマンディフェンスの「カテナッチョ」から4-4-2のゾーンディフェンスへの移行が急速に進んだが、チェーザレは、中盤はゾーン、最終ラインはマンツーマン+リベロというクラシックなスタイルを最後まで変えなかった。
 
 しかし、ロッコの、そしてみずからのサッカーを「カテナッチョ」と呼ばれるのはひどく嫌っており、筆者がかつてインタビューした時にも、
「カテナッチョはインテルのサッカー。ミランは昔も今も積極的にボールを回してプレーするという伝統がある。ミランのサッカーにはいつの時代にもミランらしさが刻まれている。それはカテナッチョとは違う」
 と語っていたものだ。
 
 とはいえ、そのサッカーが堅守速攻を基本とした「古き良きイタリアサッカー」の伝統を正しく受け継ぐものだったことに変わりはない。
 
 パラグアイ代表監督を最後にサッカーの表舞台から退いた後、この10数年は悠々自適の老後を過ごしていた。数か月前までは元気でスポーツクラブなどに通っていたという。
 
 突然の訃報が流れたその日、アタランタ対ミランが開催されたベルガモのアトレティ・アッズーリ・ディターリアのゴール裏には、こんな横断幕が踊っていた。
 
「クライフとマルディーニ、今はなくなってしまった古き良きサッカーの真に偉大なチャンピオン」

文:片野道郎
 
【著者プロフィール】
片野道郎/1962年生まれ、仙台市出身。95年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させる。『ワールドサッカーダイジェスト』では、現役監督のロベルト・ロッシ氏とのコラボによる戦術解説や選手分析が好評を博している。
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