今季で23回目のシーズンを迎えたJリーグ。そのなかでは、現在は行なわれていないが、ファンを大いに熱狂させるプレーオフが存在した。
 
　それらは、栄光を手にするための華やかなものというより、トップカテゴリーへの昇格、残留を懸けた生き残り合戦の要素が強いため、時に残酷な光景が、より人々の心を熱くさせ、その記憶に強く、深く刻まれるものとなった。
 
　ここで紹介するのは、J１絡みの入れ替え戦。特に1998年、翌年に二部リーグ制のスタートを控え、J１とJ２へのチームの振り分けを目的としたJ１参入決定戦は、Jリーグでは初めてのサバイバルマッチとして、全国で究極の戦いが演じられた。
 
　97、98年の順位ポイントによるJリーグ下位５チームと、JFL（当時の２部リーグ）の上位２チーム（Jリーグ準会員のみ）でJ１の枠３つを争う予定だったが、サッカー界を揺るがした横浜フリューゲルスの吸収消滅により、計５チームがこの戦いに身を投じた。
 
　１回戦、Jリーグ順位ポイント最下位のアビスパ福岡とJFL２位の川崎フロンターレは、後者が主導権を握る展開となったが、89分に福岡が山下芳輝の起死回生の同点ゴールで追い付き、延長戦で勝ち越すという劇的な勝ち上がりを見せた。
 
　福岡は２回戦でジェフ市原に敗れるも、最後の１枠を懸けたコンサドーレ札幌との一戦では、試合をコントロールしてJ１入りを決めた。福岡は翌シーズンも残留争いを強いられるも僅差で降格を免れ、「落ちない」クラブとして受験生からも脚光を浴びることになった。
 
　この究極の争いから６年後、Jリーグは入れ替え戦を導入。J１の下位２チーム、J２の上位２チームは自動昇降格となるが、J１の16位とJ２の３位はホーム＆アウェーで戦うというレギュレーションだった。
 
　最初の入れ替え戦にJ１・16位で出場した柏レイソルは、この年こそ福岡を下して残留を果たすも、再びこの戦いを強いられた翌シーズンはヴァンフォーレ甲府に大量失点を喫し、初の降格を経験することとなった。
 
　また、2007年には広島が京都に敗れ、02年以来２度目となる降格の憂き目に遭った。Jリーグ創設２年目でステージ優勝を果たし、低迷、２度のJ２降格、そこから浮上して12年からのJ１連覇、そして今季のステージ優勝＆年間勝点１位……広島の歴史は、実に雌伏に富んでいる。
 
　この入れ替え戦は08年を最後に廃止されたが、J２とJ３の間では現在も行なわれており、今季はJ2・21位の大分とJ３・２位の町田ゼルビアが11月29日、12月６日にホーム＆アウェーで対戦する。
 
◎1998年J１参入決定戦
◇１回戦
アビスパ福岡 ３（延長）２ 川崎フロンターレ
◇２回戦
第１戦：ヴィッセル神戸 ２-１ コンサドーレ札幌
第２戦：札幌 ０-２ 神戸
第１戦：福岡 ０-２ ジェフ市原
第２戦：市原 ２-１ 福岡
◇第３参入クラブ決定戦
第１戦：福岡 １-０ 札幌
第２戦：札幌 ０-３ 福岡
J１参入：神戸、市原、福岡
J２参入：川崎F、札幌
 
◎J１・J２入れ替え戦
◇2004年
J１・16位：柏レイソル
J２・３位：福岡
第１戦：福岡 ０-２ 柏
第２戦：柏 ２-０ 福岡
柏がJ１残留
 
◇2005年
J１・16位：柏
J２・３位：ヴァンフォーレ甲府
第１戦：甲府 ２-１ 柏
第２戦：柏 ２-６ 甲府
甲府がJ１昇格
 
◇2006年
J１・16位：福岡
J２・３位：神戸
第１戦：神戸 ０-０ 福岡
第２戦：福岡 １-１ 神戸
※アウェーゴールの多い神戸が勝利
神戸がJ１昇格
 
◇2007年
J１・16位：広島
J２・３位：京都サンガ
第１戦：京都 ２-１ 広島
第２戦：広島 ０-０ 京都
京都がJ１昇格
 
◇2008年
J１・16位：磐田
J２・３位：ベガルタ仙台
第１戦：仙台 １-１ 磐田
第２戦：磐田 ２-１ 仙台
磐田がJ１残留