欧州で台頭する新たな監督たち

アンチェロッティ(左)はイタリア代表、ジダン(右)はマドリーでコーチを務めたが、前者はレッジャーナ、パルマ、ユベントスでの、後者はマドリー下部組織での指揮経験があったからこそ、輝かしい実績を築くことができたと言えよう。 (C) Getty Images
アラベスのアベラルドは、スペイン代表選手としてワールドカップに出場するなどの活躍を見せた後、地元スポルティング・ヒホンの下部組織の監督から指導者のキャリアをスタートさせ、4部のクラブを地域カップで優勝させるなど、下部リーグで指導力を発揮し、スポルティングに戻ると、チームを1部昇格に導いた。
そして、2017年12月から率いているアラベスでも1部残留を果たし、今シーズンは台風の目になっている。
そして、2017年12月から率いているアラベスでも1部残留を果たし、今シーズンは台風の目になっている。
ベティスのキケ・セティエンも、引退してほとんどすぐにラシン・サンタンデールを率い、1部残留に成功。その後は2部、3部のクラブでシーズン途中解任の憂き目に遭ったが、3部のルーゴを2部に昇格させて注目を浴びる。
そして、ラス・パルマスでは魅力的なサッカーで、2シーズン連続1部残留に成功。昨シーズンからベティスを率い、ヨーロッパリーグ出場に導いている。
このように、最近までは無名だった監督が、国際的に注目を集めつつある。選手だけではない、監督も台頭している。それが欧州サッカーの強さだろう。
下部組織であれ、下部リーグであれ、監督は監督として成熟する。そうでない例外はあるが、監督はコーチと違う。「10年コーチで監督」という丁稚奉公的思考は、あまり好ましくない。
文:小宮 良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。