各システムが戦術的な弱点を抱える中でどこに落としどころを?

昨年10月の招集を軽傷で辞退したため、コンテの心証を害したとも言われたインシーニェだが、ナポリでハイパフォーマンスを維持して復帰。同じく好調エル・シャーラウィと左ウイングのポジションを争う。(C)Getty Images
しかし、実際に採用してみると、圧倒的格下相手には狙い通りに機能するものの、ホームでのクロアチア戦、アウェーでのブルガリア戦(いずれも1-1)では、サイドで数的不利に陥りやすいという戦術的弱点を突かれる。結果、ウイングバックが押し込まれて5バック状態になる時間帯が長くなって、攻撃に転じてもサイドを効果的に活かせないという問題を露呈してしまった。
戦力的にもアントニオ・カンドレーバ(ラツィオ)をはじめ、アレッサンドロ・フロレンツィ(ローマ)、ステファン・エル・シャーラウィ(ローマ)、ジャコモ・ボナベントゥーラ(ミラン)、そしてインシーニェと、比較的人材が充実しているウイング陣を最大限に活かしきれないという悩みを抱えていた。
昨夏以降にサイドにウイングとSBを置く4-3-3、続いて4-2-4にシステムを変更したのは、この戦術的な問題を解決すると同時に、ウイングの人材を活かすためだった。最終的に4-3-3ではなく4-2-4が選ばれたのは、もちろん4対4によるパターン攻撃を使うためだ。
しかし、このシステムも昨年11月のベルギー戦(1-3)で、今度はピッチ中央のゾーンで恒常的な数的不利に陥り、中盤が機能しなくなるという弱点をさらけ出してしまう。クオリティーで上回る相手にボールと地域を支配されれば、守勢一方に回って押し切られる形になることは否めない。
3-5-2(サイドでの数的不利)、4-3-3(4トップのパターン攻撃が使えない)、4-2-4(中央での数的不利)と、それぞれのシステムが戦術的な弱点を抱えている中で最終的な落とし所をどこに見出すかは、選手のクオリティーによってその弱点をどれだけカバーできるか、あるいは弱点を補ってあまりある長所を作り出せるかにかかっている。
今回の2試合は、それを見出し見極めるための最後の機会だ。スペイン戦では相手がボールを支配して攻勢に立つ状況でどう試合をコントロールし、逆に脅威をどのように作り出すかが問われる。中盤で数的不利に陥る可能性が高い4-2-4をあえて貫くのか、それとも中央のゾーンが厚くなる3-5-2や4-3-3を使ってくるのか、そして中盤とウイングのキーポジションに誰を起用するのかなど、注目点は少なくない。
このスペイン戦、そして続くドイツ戦のシステムとメンバーが、本番に向けた土台になることは確か。注目したい。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
片野道郎/1962年生まれ、仙台市出身。95年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させる。『ワールドサッカーダイジェスト』では、現役監督のロベルト・ロッシ氏とのコラボによる戦術解説や選手分析が好評を博している。
戦力的にもアントニオ・カンドレーバ(ラツィオ)をはじめ、アレッサンドロ・フロレンツィ(ローマ)、ステファン・エル・シャーラウィ(ローマ)、ジャコモ・ボナベントゥーラ(ミラン)、そしてインシーニェと、比較的人材が充実しているウイング陣を最大限に活かしきれないという悩みを抱えていた。
昨夏以降にサイドにウイングとSBを置く4-3-3、続いて4-2-4にシステムを変更したのは、この戦術的な問題を解決すると同時に、ウイングの人材を活かすためだった。最終的に4-3-3ではなく4-2-4が選ばれたのは、もちろん4対4によるパターン攻撃を使うためだ。
しかし、このシステムも昨年11月のベルギー戦(1-3)で、今度はピッチ中央のゾーンで恒常的な数的不利に陥り、中盤が機能しなくなるという弱点をさらけ出してしまう。クオリティーで上回る相手にボールと地域を支配されれば、守勢一方に回って押し切られる形になることは否めない。
3-5-2(サイドでの数的不利)、4-3-3(4トップのパターン攻撃が使えない)、4-2-4(中央での数的不利)と、それぞれのシステムが戦術的な弱点を抱えている中で最終的な落とし所をどこに見出すかは、選手のクオリティーによってその弱点をどれだけカバーできるか、あるいは弱点を補ってあまりある長所を作り出せるかにかかっている。
今回の2試合は、それを見出し見極めるための最後の機会だ。スペイン戦では相手がボールを支配して攻勢に立つ状況でどう試合をコントロールし、逆に脅威をどのように作り出すかが問われる。中盤で数的不利に陥る可能性が高い4-2-4をあえて貫くのか、それとも中央のゾーンが厚くなる3-5-2や4-3-3を使ってくるのか、そして中盤とウイングのキーポジションに誰を起用するのかなど、注目点は少なくない。
このスペイン戦、そして続くドイツ戦のシステムとメンバーが、本番に向けた土台になることは確か。注目したい。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
片野道郎/1962年生まれ、仙台市出身。95年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させる。『ワールドサッカーダイジェスト』では、現役監督のロベルト・ロッシ氏とのコラボによる戦術解説や選手分析が好評を博している。