「僕には僕のプレーがあるし、遠藤さんには遠藤さんの特長がある」
柴崎のブレない信念は、すべてにおいて変わらない。思い起こすのは、13年のインタビューでのことだ。
当時、“遠藤保仁の後継者”とあらゆるメディアで取り上げられていた柴崎は、珍しく語気を強めてこう言った。
「その質問は、前にテレビで聞かれたんですが、バッサリとカットされていたので皆さんには伝わっていないのかと思います。ハッキリ言いますが、誰かが誰かの後継者になることはできないんです。僕には僕のプレーがあるし、遠藤さんには遠藤さんの特長がある。遠藤さんには僕にないものをたくさん持っていますが、逆に僕が持っているものもあります」
自分は決して“遠藤二世”ではない。強い自負を感じるその言葉を、柴崎はすでに前年のプレーで証明していた。
12年のナビスコカップ決勝、清水戦。ボランチで先発した柴崎は、優勝に導く2ゴールを挙げた。1点目はジョルジーニョ監督に指名されたPK、2点目は延長前半の決勝点だ。秀逸だったのは2点目である。
カウンターで駆け上がった柴崎は、横パスをトラップ一発でコントロールし、最終ラインの裏へ抜け出す。直後に右足を振り抜き、渾身のボレーを沈めた。
一気に前線まで駆け上がる運動量と高い技術をゴールに結びつけるセンスは、遠藤とはひと味違った持ち味だろう。「僕には僕のプレーがある」。ひと一倍こだわりの強い柴崎が、二世と言われるのを嫌がるのも当然だったのかもしれない。
こうした高い攻撃力を評価し、ボランチよりも攻撃的なポジションに抜擢した人物もいた。前日本代表監督のハビエル・アギーレである。
柴崎がメキシコ人指揮官に与えられたポジションは、ボランチより一列前のインサイドハーフの一角で、このポジションチェンジから彼の意識は少し変化したようだ。「ゲームをコントロールしたい」。常々そう語っていた配球役としての仕事に加えて、ゴールを意識したプレーがさらに増えたのだ。
印象的だったのが、そのプレーの“質”だろう。インサイドハーフでコンビを組んだ細貝萌が戸惑いを見せるなか、柴崎は巧みな位置取りでCFやウイングをサポート。香川真司とともに同ポジションで出場したジャマイカ戦でも、果敢に前線に飛び出し、エリア内右からのシュートで勝利につながるオウンゴールを誘っている。
「経験のないポジションでしたが、特長を出しやすいと感じました。後ろに(アンカーの)森重さんが残っている安心感があったので、攻撃の比重を高められました」
その後のブラジル戦では失点に結びつく手痛いミスを犯したが、満を持して挑んだ今年のアジアカップでは、準々決勝のUAE戦で同点に追いつく豪快なミドルも沈めた。あのゴールも柴崎のハイライトだ。
演出家で終わるのではなく、フィニッシュにも絡む。元々備えていた素質を、より発揮しやすくなったインサイドハーフ起用は、柴崎にとって、ひとつの節目だったと言えるだろう。
当時、“遠藤保仁の後継者”とあらゆるメディアで取り上げられていた柴崎は、珍しく語気を強めてこう言った。
「その質問は、前にテレビで聞かれたんですが、バッサリとカットされていたので皆さんには伝わっていないのかと思います。ハッキリ言いますが、誰かが誰かの後継者になることはできないんです。僕には僕のプレーがあるし、遠藤さんには遠藤さんの特長がある。遠藤さんには僕にないものをたくさん持っていますが、逆に僕が持っているものもあります」
自分は決して“遠藤二世”ではない。強い自負を感じるその言葉を、柴崎はすでに前年のプレーで証明していた。
12年のナビスコカップ決勝、清水戦。ボランチで先発した柴崎は、優勝に導く2ゴールを挙げた。1点目はジョルジーニョ監督に指名されたPK、2点目は延長前半の決勝点だ。秀逸だったのは2点目である。
カウンターで駆け上がった柴崎は、横パスをトラップ一発でコントロールし、最終ラインの裏へ抜け出す。直後に右足を振り抜き、渾身のボレーを沈めた。
一気に前線まで駆け上がる運動量と高い技術をゴールに結びつけるセンスは、遠藤とはひと味違った持ち味だろう。「僕には僕のプレーがある」。ひと一倍こだわりの強い柴崎が、二世と言われるのを嫌がるのも当然だったのかもしれない。
こうした高い攻撃力を評価し、ボランチよりも攻撃的なポジションに抜擢した人物もいた。前日本代表監督のハビエル・アギーレである。
柴崎がメキシコ人指揮官に与えられたポジションは、ボランチより一列前のインサイドハーフの一角で、このポジションチェンジから彼の意識は少し変化したようだ。「ゲームをコントロールしたい」。常々そう語っていた配球役としての仕事に加えて、ゴールを意識したプレーがさらに増えたのだ。
印象的だったのが、そのプレーの“質”だろう。インサイドハーフでコンビを組んだ細貝萌が戸惑いを見せるなか、柴崎は巧みな位置取りでCFやウイングをサポート。香川真司とともに同ポジションで出場したジャマイカ戦でも、果敢に前線に飛び出し、エリア内右からのシュートで勝利につながるオウンゴールを誘っている。
「経験のないポジションでしたが、特長を出しやすいと感じました。後ろに(アンカーの)森重さんが残っている安心感があったので、攻撃の比重を高められました」
その後のブラジル戦では失点に結びつく手痛いミスを犯したが、満を持して挑んだ今年のアジアカップでは、準々決勝のUAE戦で同点に追いつく豪快なミドルも沈めた。あのゴールも柴崎のハイライトだ。
演出家で終わるのではなく、フィニッシュにも絡む。元々備えていた素質を、より発揮しやすくなったインサイドハーフ起用は、柴崎にとって、ひとつの節目だったと言えるだろう。