ポゼッションで主導権を握ろうとすればアンチェロッティの思う壺。
ここまで、とりわけ守備の局面に焦点を合わせてマドリーを分析してきたのは、こと攻撃に関しては、戦術的な観点から改めて掘り下げるべき部分が少ないからだ。
中盤での質の高いビルドアップから前線のベイル、カリム・ベンゼマ、ロナウドにボールを送り届け、そこからは圧倒的な個人能力を活かしたシンプルなアクションでフィニッシュを狙うというマドリーの攻撃を食い止めるには、今や「マドリー・キラー」と言えるアトレティコ・マドリー(22節の完勝を含め、今シーズンここまでマドリー相手の公式戦で4勝2分け)の戦い方が格好のお手本だ。
ポゼッションを放棄し、極めて高度に組織された守備ブロックで中央突破のスペースを与えず、サイドから単純なクロスを入れざるをえない状況に追い込み、それを空中戦ではね返し、そのセカンドボールに対しても素早く詰めてミドルシュートすら打たせない――。
そんなリアリスティックな戦い方が、マドリー撃破へのほぼ唯一の選択肢だ。
そのうえで、先に見たネガティブ・トランジションという弱点を突いて、90分間のうちに何度か決定的なカウンターアタックのチャンスを作り出し、それをモノにして逃げ切るというのが、最も有効な勝利へのアプローチだろう。
逆にポゼッションで主導権を握ってマドリーを自陣に押し込めようとすれば、昨シーズンのCL準決勝(バイエルン戦)が示している通り、むしろアンチェロッティ監督の思う壺だ。
主導権を相手に渡して受けに回る戦い方を難なくこなすだけでなく、そこからのカウンターアタックを最大の武器としている点こそが、マドリーの懐の深さであり、強さの秘密なのである。
それゆえ、仇敵アトレティコ以外にCLでマドリーを倒しうるチームがあるとすれば、ポゼッション志向の強いバイエルンやバルセロナではなく、むしろアトレティコと同じような戦いができるチェルシーやマンチェスター・シティ、パリ・サンジェルマンではないかと個人的には考える。
分析:ロベルト・ロッシ
取材・構成:片野道郎
【ロベルト・ロッシ】1962年3月16日生まれのイタリア人監督。現役時代はMFで、元イタリア代表監督のアリーゴ・サッキや前日本代表監督のアルベルト・ザッケローニに師事。99年に引退し、2001~08年はインテルなどでザッケローニのスタッフ(コーチ兼スカウト)。その後は下部リーグで監督を務め、現在はフリー。
中盤での質の高いビルドアップから前線のベイル、カリム・ベンゼマ、ロナウドにボールを送り届け、そこからは圧倒的な個人能力を活かしたシンプルなアクションでフィニッシュを狙うというマドリーの攻撃を食い止めるには、今や「マドリー・キラー」と言えるアトレティコ・マドリー(22節の完勝を含め、今シーズンここまでマドリー相手の公式戦で4勝2分け)の戦い方が格好のお手本だ。
ポゼッションを放棄し、極めて高度に組織された守備ブロックで中央突破のスペースを与えず、サイドから単純なクロスを入れざるをえない状況に追い込み、それを空中戦ではね返し、そのセカンドボールに対しても素早く詰めてミドルシュートすら打たせない――。
そんなリアリスティックな戦い方が、マドリー撃破へのほぼ唯一の選択肢だ。
そのうえで、先に見たネガティブ・トランジションという弱点を突いて、90分間のうちに何度か決定的なカウンターアタックのチャンスを作り出し、それをモノにして逃げ切るというのが、最も有効な勝利へのアプローチだろう。
逆にポゼッションで主導権を握ってマドリーを自陣に押し込めようとすれば、昨シーズンのCL準決勝(バイエルン戦)が示している通り、むしろアンチェロッティ監督の思う壺だ。
主導権を相手に渡して受けに回る戦い方を難なくこなすだけでなく、そこからのカウンターアタックを最大の武器としている点こそが、マドリーの懐の深さであり、強さの秘密なのである。
それゆえ、仇敵アトレティコ以外にCLでマドリーを倒しうるチームがあるとすれば、ポゼッション志向の強いバイエルンやバルセロナではなく、むしろアトレティコと同じような戦いができるチェルシーやマンチェスター・シティ、パリ・サンジェルマンではないかと個人的には考える。
分析:ロベルト・ロッシ
取材・構成:片野道郎
【ロベルト・ロッシ】1962年3月16日生まれのイタリア人監督。現役時代はMFで、元イタリア代表監督のアリーゴ・サッキや前日本代表監督のアルベルト・ザッケローニに師事。99年に引退し、2001~08年はインテルなどでザッケローニのスタッフ(コーチ兼スカウト)。その後は下部リーグで監督を務め、現在はフリー。