主導権を委ねるのか、握るのか――。
2015年が明けた。フットボールというスポーツは、この数年でどう変わり、どのような進化を遂げてきたのか――。
イタリア人の戦術アナリストによる考察で、「モダンフットボールの最前線」に迫る。
――◆――◆――
いま、モダンフットボールの最前線では何が起こっているのか? この数年間でサッカーは、どんな進化を遂げたのか?
2010年と2014年を比較するならば、インテル・ミラノとスペイン代表、レアル・マドリーとドイツ代表について語らないわけにはいかない。
10年は「ジョゼ・モウリーニョのインテル」と「ビセンテ・デル・ボスケのスペイン代表」の年だった。インテルはバイエルン・ミュンヘンを下してチャンピオンズ・リーグ(CL)を制覇し、スペインは南アフリカでオランダを破り世界の頂点に立っている。
この2つのチームは、サッカーのコンセプトも、そしてスタイルも180度異なっていた。
インテルは非常にソリッドなチームで、ボールと主導権を相手に委ね、そこからヴェスレイ・スナイデルのセンスと戦術眼、ディエゴ・ミリート、サミュエル・エトー、ゴラン・パンデフのスピードを活かして一気に逆襲の速攻を仕掛ける戦術に特徴があった。
スペイン代表はバルセロナ仕込みの「ティキタカ」によって、スペースと相手を支配した。
あれから4年が経過した14年、CLを制したのはカルロ・アンチェロッティのR・マドリーであり、ワールドカップで頂点に立ったのはヨアヒム・レーブ率いるドイツだった。
個人のクオリティーを活かした質の高いカウンターアタックで、前シーズンのCL王者バイエルンに準決勝第2レグで4ゴールを叩き込んだR・マドリーのスタイルは、モウリーニョが率いたインテルのそれと根本のところで通じ合っていたと言える。
一方、ドイツ代表のスタイルは、ジョゼップ・グアルディオラのバイエルンから多くを採り入れていたはずだ。そのベースにあるのはもちろん、バルセロナ直系のポゼッション志向である。ドイツ代表は高い戦術的秩序と正確なボールポゼッション、的確なプレーのタイミングによって、ピッチ上の時間とスペースをコントロールし、システマチックに相手の守備網を切り崩した。
こうした比較から言えるのは、相手に主導権を委ねる戦い方でも、自ら主導権を握りピッチを支配する戦い方でも、勝利は手に入るという事実だ。それは、4年前も現在も変わらない。絶対的な勝利の処方箋は存在しない――。それがサッカーにおける唯一の真実というわけだ。
試合の中で起こる攻守の入れ替わり、そしてさまざまなアクションの効果は、地震計のようなグラフによって表現できる。
勝利を成し遂げるうえで重要なのは、アクションの回数や時間の長さではなく――ボール支配率と勝敗に関連性がないのが好例だ――、その効果と有効性だ。地震の被害の大きさが、回数や継続時間ではなく、強度、すなわちインテンシティーによって決まるように。
イタリア人の戦術アナリストによる考察で、「モダンフットボールの最前線」に迫る。
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いま、モダンフットボールの最前線では何が起こっているのか? この数年間でサッカーは、どんな進化を遂げたのか?
2010年と2014年を比較するならば、インテル・ミラノとスペイン代表、レアル・マドリーとドイツ代表について語らないわけにはいかない。
10年は「ジョゼ・モウリーニョのインテル」と「ビセンテ・デル・ボスケのスペイン代表」の年だった。インテルはバイエルン・ミュンヘンを下してチャンピオンズ・リーグ(CL)を制覇し、スペインは南アフリカでオランダを破り世界の頂点に立っている。
この2つのチームは、サッカーのコンセプトも、そしてスタイルも180度異なっていた。
インテルは非常にソリッドなチームで、ボールと主導権を相手に委ね、そこからヴェスレイ・スナイデルのセンスと戦術眼、ディエゴ・ミリート、サミュエル・エトー、ゴラン・パンデフのスピードを活かして一気に逆襲の速攻を仕掛ける戦術に特徴があった。
スペイン代表はバルセロナ仕込みの「ティキタカ」によって、スペースと相手を支配した。
あれから4年が経過した14年、CLを制したのはカルロ・アンチェロッティのR・マドリーであり、ワールドカップで頂点に立ったのはヨアヒム・レーブ率いるドイツだった。
個人のクオリティーを活かした質の高いカウンターアタックで、前シーズンのCL王者バイエルンに準決勝第2レグで4ゴールを叩き込んだR・マドリーのスタイルは、モウリーニョが率いたインテルのそれと根本のところで通じ合っていたと言える。
一方、ドイツ代表のスタイルは、ジョゼップ・グアルディオラのバイエルンから多くを採り入れていたはずだ。そのベースにあるのはもちろん、バルセロナ直系のポゼッション志向である。ドイツ代表は高い戦術的秩序と正確なボールポゼッション、的確なプレーのタイミングによって、ピッチ上の時間とスペースをコントロールし、システマチックに相手の守備網を切り崩した。
こうした比較から言えるのは、相手に主導権を委ねる戦い方でも、自ら主導権を握りピッチを支配する戦い方でも、勝利は手に入るという事実だ。それは、4年前も現在も変わらない。絶対的な勝利の処方箋は存在しない――。それがサッカーにおける唯一の真実というわけだ。
試合の中で起こる攻守の入れ替わり、そしてさまざまなアクションの効果は、地震計のようなグラフによって表現できる。
勝利を成し遂げるうえで重要なのは、アクションの回数や時間の長さではなく――ボール支配率と勝敗に関連性がないのが好例だ――、その効果と有効性だ。地震の被害の大きさが、回数や継続時間ではなく、強度、すなわちインテンシティーによって決まるように。