マドリードダービーに完敗 順風満帆に見えたレアル・マドリーの死角はどこにあるのか

カテゴリ:メガクラブ

ロベルト・ロッシ

2015年02月09日

ハイプレスを諦めてネガティブ・トランジションのリスクを取る。

写真左からロナウド、ベンゼマ、ベイルの3トップに加え、左右のインサイドハーフや両サイドバックも積極的に攻撃参加。ボールのラインよりも前に多くの人数を送り込み、果敢にゴールを狙うその意図は――。 (C) Getty Images

画像を見る

 もちろん、相手が必要以上に攻撃に人数を掛けないなど、カウンターが難しい状況では、後方からパスを繋いでビルドアップする。
 
 ただ、その場合も中盤でボールポゼッションを確立して試合の主導権を手中に収めるというよりは、なるべく縦に素早くボールを繋ぎ、効率良くフィニッシュを狙う。ボール支配率を高めて相手の攻撃の時間を削る「ポゼッションのためのポゼッション」は志向していない。
 
 とはいえ、攻撃の局面においてはボールのラインよりも前に多くの人数を送り込み、積極的にゴールを狙う姿勢をはっきりと打ち出している。
 
 両サイドバックは同時に攻め上がるうえ、左右のインサイドハーフも敵の中盤のラインを超えて2ライン間まで進出し、縦パスを引き出そうとする。一般的に攻撃の局面における理想的なバランスはボールの前に5人、後ろに5人という配分だが、マドリーは前に6人目を送り込むシーンが珍しくない。
 
 攻撃時にこれだけ前掛かりになる傾向があり、しかもボールロスト直後にも例えばバイエルンやバルセロナのような即時奪回を狙ったハイプレスを放棄するとあれば、マドリーにとってネガティブ・トランジションの場面は、相手に簡単にカウンターを許す、いわばアキレス腱になりかねない。
 
 実際、マドリーの最大の弱点はまさにその部分にある。前掛かりになったところでボールを失い、素早く前線に展開されれば、後方に残ったCB2人、あるいはそこにアンカーのクロースを含めた3人が、2対2、2対3、3対3といった困難な状況に直面する可能性が小さくない。
 
 しかしアンチェロッティ監督は、このリスクを受け入れてでも、中盤に攻撃的なプレーヤーを並べて攻撃のクオリティを高めるソリューションをあえて選んでいるように見える。
 
 この選択がもたらす攻撃力の高さを失点のリスクと天秤にかけた時に上回るのは前者であり、その意味でネガティブ・トランジション時の危険は「計算されたリスク」だと考えているのだろう。
 
 全ての局面において完璧に振る舞える「完全なチーム」が存在しえない以上、どんな監督も何かを諦め、どこかでリスクを取らなければならない。
 
 マドリーを率いるうえでアンチェロッティが選んだのは、チームが擁する攻撃のタレントを1人でも多くピッチに送り出し、彼らのクオリティを引き出した攻撃的なスタイルで勝利を掴むために、ハイプレスを諦めてネガティブ・トランジションのリスクを取ったのだ。
 
 それと引き換えに前線と中盤の選手に課す守備のタスクを単純化し、その分ロングカウンターを含めた攻撃の局面で違いを作り出すことができれば、最終的な収支はプラスになる――。そんな判断だろう。
【関連記事】
4点差の衝撃!! マドリードダービーにおける大差スコアの歴史
レアル・マドリーが認めたその実力は本物か!? 16歳の神童ウーデゴーを現役監督が徹底解剖!
モダンフットボール最前線 「システム」から「ユニット」へ――ボールポゼッションについての新たな考え方
【日本代表】現役イタリア人監督が敗因分析「本田と香川が遠く離れた4-3-3に疑問」
30日未明にカリアリ戦!! 好調・本田圭佑のプレーを現役イタリア人監督が徹底分析

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 世界各国の超逸材を紹介!
    4月18日発売
    母国をさらなる高みに導く
    「新・黄金世代」大研究
    列強国も中小国も
    世界の才能を徹底網羅!!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ