（５）予想される今夏の補強
 
　現在、噂に上っているチェルシーの新戦力候補のほとんどは、コンテがかつてユーベで指導した選手、あるいはセリエAの対戦相手として直接そのプレーを知っている選手だ。
 
　これは目先の結果を追求するうえで試行錯誤を最小限に抑えたいことが大きな理由だろうが、戦術的な関連性も見て取れる。
 
　コンテは自分がレパートリーとする攻守のメカニズムを、11対０などの反復トレーニングによってチームに植え付けるタイプ。言い方を変えれば、選手には「頭を使って状況を解決する」よりも「決まったタスクやパターンを遂行する」ことを要求する。つまり、チームをすぐに機能させる上では、コンテの戦術を理解し忠実に遂行できる選手を必要としているということだ。
 
　具体的に噂に上っている名前を見ても、最終ラインにはレオナルド・ボヌッチ（ユーベ）、中盤には補強の目玉となりうるポール・ポグバ（ユーベ）、昨シーズンまでユーベ所属だったアルトゥーロ・ダル（バイエルン）、ユーベ時代に獲得を強く望んでいたラジャ・ナインゴラン（ローマ）と、コンテが知り尽くした選手が並んでいる。
 
　攻撃陣に目を向けても、ファン・ギジェルモ・クアドラード（チェルシーからユーベにレンタル中）に至っては、ユーベ４年目に向けたメルカートで最優先での獲得を要望したにもかかわらず、フロントが獲ってくれなかったことが電撃辞任の原因のひとつになった、と言われるほどご執心だった選手だ。
 
　さらに、新CF候補にリストアップされているエディンソン・カバーニ（元ナポリ／現パリSG）、ゴンサロ・イグアイン（ナポリ）、マウロ・イカルディ（インテル）、グラツィアーノ・ペッレ（サウサンプトン）なども、やはり“イタリアン・コネクション”だ。来シーズンのチェルシーが、一気に「イタリア化」を進めるのは間違いないだろう。
 
文：片野道郎