【浦和】引退を決断した鈴木啓太。「子どもの頃から、山あり谷ありだった」という人生を変えたオシム日本代表元監督のひと言、その生き様にリンクするニーチェの哲学
カテゴリ:Jリーグ
2015年11月19日
「近年稀に見る好ゲーム」。今はリハビリ中のFC東京の石川直宏と見せた実力伯仲の対決を経て――。
彼は「周りが僕の力を引き出してくれた」と言う。
その一方で、彼が周りの選手たちの力を引き出してきたのも事実だ。それは味方のみならず、時に相手チームの選手をも。
12年5月に味の素スタジアムで行なわれた浦和-FC東京戦。1-1のドローに終わったものの90分通して緊迫感が漲り、ペトロヴィッチ監督が「近年稀に見る好ゲームだった」と絶賛した一戦である。
その試合、鈴木はフル出場している。そこで、見応えのある火花を散らす1対1の対決が見られた。相手は、同い年の石川直宏だった。
FC東京の狙っていたショートカウンターがハマり、サイドでボールを持った石川が得意の形に持ち込みドリブルで駆け上がる。
浦和の守備陣は数的不利な状況に置かれていた。行くべきか、待つべきか。状況を一瞬で判断した鈴木は、躊躇わずサイドへ一目散で走った。
そして身を投げ打つようなスライディングタックルで、間一髪、石川の突破を食い止めたのだ。
31歳になるふたりが見せたまさに真剣勝負。その後、石川は言っていた。
「カットされたのはめちゃくちゃ悔しかった。でも僕もあの場面、ものすごく楽しかった(笑)」
鈴木は「見返してやる」という気持ちが闘う原動力になってきたと言うが、おそらく鈴木にボールを奪われ、そして鈴木の生き様を見て、“啓太に負けてたまるか!”と思ってきた選手も決して少なくないはずだ。今は左膝靭帯断裂からの復帰を目指す石川も、鈴木の今後の決断をいろんな意味で注視しているひとりのはずだ。
鈴木の身体を張ったまさに魂のこもったボールサイドでのチャージは、対戦相手にも、そして観る者の心の深いところに響くものがあった。
だからこそ……記者個人的には、その魂の共鳴を必要としているクラブチームがあるのならば、ぜひ現役を続けてほしいと思う。
「今、最も大切なのは、浦和レッズが2015シーズンのチャンピオンになること。チームも私もそこに集中しています。最高の瞬間を分かち合えるよう、最後まで共に戦いましょう! We are REDS!」
そうFacebookのメッセージを締め括った鈴木は、改めてリーグ戦に全力を注ぐ。浦和の栄光のため、次の試合に勝つため、眼前の1対1に勝つため、そして己に勝つため……鈴木は変わらず人一倍汗をかき、魂を込めてボールを追う。
取材・文●塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)
その一方で、彼が周りの選手たちの力を引き出してきたのも事実だ。それは味方のみならず、時に相手チームの選手をも。
12年5月に味の素スタジアムで行なわれた浦和-FC東京戦。1-1のドローに終わったものの90分通して緊迫感が漲り、ペトロヴィッチ監督が「近年稀に見る好ゲームだった」と絶賛した一戦である。
その試合、鈴木はフル出場している。そこで、見応えのある火花を散らす1対1の対決が見られた。相手は、同い年の石川直宏だった。
FC東京の狙っていたショートカウンターがハマり、サイドでボールを持った石川が得意の形に持ち込みドリブルで駆け上がる。
浦和の守備陣は数的不利な状況に置かれていた。行くべきか、待つべきか。状況を一瞬で判断した鈴木は、躊躇わずサイドへ一目散で走った。
そして身を投げ打つようなスライディングタックルで、間一髪、石川の突破を食い止めたのだ。
31歳になるふたりが見せたまさに真剣勝負。その後、石川は言っていた。
「カットされたのはめちゃくちゃ悔しかった。でも僕もあの場面、ものすごく楽しかった(笑)」
鈴木は「見返してやる」という気持ちが闘う原動力になってきたと言うが、おそらく鈴木にボールを奪われ、そして鈴木の生き様を見て、“啓太に負けてたまるか!”と思ってきた選手も決して少なくないはずだ。今は左膝靭帯断裂からの復帰を目指す石川も、鈴木の今後の決断をいろんな意味で注視しているひとりのはずだ。
鈴木の身体を張ったまさに魂のこもったボールサイドでのチャージは、対戦相手にも、そして観る者の心の深いところに響くものがあった。
だからこそ……記者個人的には、その魂の共鳴を必要としているクラブチームがあるのならば、ぜひ現役を続けてほしいと思う。
「今、最も大切なのは、浦和レッズが2015シーズンのチャンピオンになること。チームも私もそこに集中しています。最高の瞬間を分かち合えるよう、最後まで共に戦いましょう! We are REDS!」
そうFacebookのメッセージを締め括った鈴木は、改めてリーグ戦に全力を注ぐ。浦和の栄光のため、次の試合に勝つため、眼前の1対1に勝つため、そして己に勝つため……鈴木は変わらず人一倍汗をかき、魂を込めてボールを追う。
取材・文●塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)