チャンスをもらえる時間的猶予は少ない
現状のヘタフェは1回とはいえ、久保とアレニャをツーシャドーとして起用したり、後ろのダブルボランチの一人がボール回収役としてバンバン走り、創造性の高い二人にいい形でボールを扱わせるために補完性を高めようと努力はしている。
ただ、機能面に目を向けると絵に描いた餅だ。
フットボール自体が「ボールを収めてハーフレーンにいる二人に預ける」とか、「バイタルエリアに入ったら彼らに再現性高くパスを回す」とかというサッカーをやってきたわけではないから。ファイトスタイルでボールを何とか前進させて泥臭く点を取り、セットプレーで点を奪ってきたチームだからね。
相手が間延びした状況なら何とか久保やアレニャを使えるんだけど、相手がきっちり守備を整えてきた場合に彼ら二人にボールを差し込むためのトレーニングをしていないはず。戦術として再現性を高くするためのトレーニングをこれまでは取り組んでいないと思う。
初めての戦術でどうチームに落とし込んでいくのか?
ボルダラス監督も、彼ら二人をどう生かすかを少し試行錯誤する時間が必要になる。数試合が経ったけど、久保からも、アレニャからも、そんなにポジティブ要素は出てきていない。そうなると、あと5試合くらい彼らから何も生まれなかったら共通認識をもっている慣れたスタイルに戻したほうがいいという思考になっていくのが自然だ。
ただ、機能面に目を向けると絵に描いた餅だ。
フットボール自体が「ボールを収めてハーフレーンにいる二人に預ける」とか、「バイタルエリアに入ったら彼らに再現性高くパスを回す」とかというサッカーをやってきたわけではないから。ファイトスタイルでボールを何とか前進させて泥臭く点を取り、セットプレーで点を奪ってきたチームだからね。
相手が間延びした状況なら何とか久保やアレニャを使えるんだけど、相手がきっちり守備を整えてきた場合に彼ら二人にボールを差し込むためのトレーニングをしていないはず。戦術として再現性を高くするためのトレーニングをこれまでは取り組んでいないと思う。
初めての戦術でどうチームに落とし込んでいくのか?
ボルダラス監督も、彼ら二人をどう生かすかを少し試行錯誤する時間が必要になる。数試合が経ったけど、久保からも、アレニャからも、そんなにポジティブ要素は出てきていない。そうなると、あと5試合くらい彼らから何も生まれなかったら共通認識をもっている慣れたスタイルに戻したほうがいいという思考になっていくのが自然だ。
そうなれば75分間はハードワークし、相手ブロックが広がってきたところで創造性のある久保やアレニャを投入し、彼らにはスペースをもった状況でプレーしてもらったほうがいいとなってもおかしくない。だから、プロの世界は結果が必要なのよ!
19歳で将来があるからとか、マドリ―が獲得するくらい有望だからとかと、ヘタフェに言うのはおかしな話だから、普通に考えると自分で結果を出してチャンスをつかみとるしかない。
今は走行距離など細かく数値化される時代だけど、久保のポジションはゴールに直結するプレーが最もわかりやすい評価を受けるところだから、得点やアシストで万人が納得する結果にこだわらないと自分のプレーを表現するところまでたどり着かない。
その一つの手段が自分の頭を越えてしまうボールのセカンドチャンスを狙って回収する能力を上げること。予測能力を高めて自分の足下にボールを収めるための確率を上げること。ある種、ビジャレアルでレギュラー争いをすることと同等以上の難しさがある。
FC東京でも堅守速攻を経験しただろうけど、あのサッカーには再現性が担保されている部分があるし、スピードダウンしたときには久保を使うようなことが約束事になっていたから周囲も彼がどんなボールのもらい方をしたいのかを理解してプレーしていた。相互関係が築けていたし、久保の能力も周囲は認めていた。
昨シーズンのマジョルカもそうだけど、ヘタフェの選手も、久保の能力を認めてはいても「自分たちの生活水準を上げるためにボールを預けることが勝利に直結するか」という部分について信頼しているかといえば、まだそこまでではない。
だから、勝利に直結するプレーで仲間の信頼を得ること。
これが一番の特効薬! スペインはわかりやすいから。「あいつにボールを預けていれば勝たせてくれる」と思えば、手のひらを返したようにパスを回してくる。ビジャレアルでは「そのチャンスすらもらえない」と思ったからヘタフェに移籍したわけで、ゴールに直結する結果を明確に示さないといけないことは、彼自身が一番わかっている。
ゼロからゴールを生み出すことを続けていけば、周囲が変わってゼロが一、二になる。そうなれば自分が特徴を出すところに集中できる環境に変わっていく。それは監督の考えも含めて。
「奪ったらタケだ」
こうなればどんどん好循環になっていく。ヘタフェはこのスペイン1部のクラブにおいて唯一無二「ボールが空中を飛び交うスタイル」。どの下位チームも、もう少しボールを持とうとするから、ある意味結果に徹している。これだけ再現性が少ないサッカーをする中で、昨シーズンの後半戦と同じような活躍ができれば久保自身の実力の底上げが確実にできる。
いずれにしろ久保とアレニャの二枚が攻撃のリズムを作れないと、全員でのファイトスタイルに戻ることに変わりはないと思う。二人にとっても結果を出すまでの猶予期間は迫っている。きっとゴールが生まれなければ二人で一枠を争うような人選にもなっていく可能性はある。
もう時間的な猶予がない。
ここ1か月くらいは格上ばかりだから厳しい戦いが待っている。ここで結果を出すしかない。ここを過ぎる頃には監督も「これでいく」ということを決めて進むだろうし、ヘタフェは現状のままだと残留争い組と生き残りをかけた死闘を演じることになるから戦い方は100%ファイトスタイルになり、苦いシーズンで終わってしまうからね。
分析●安永聡太郎
取材・文●木之下潤
※取材は2月1日に実施
【分析者プロフィール】
安永聡太郎(やすなが・そうたろう)
1976年生まれ。山口県出身。清水商業高校(現・静岡市立清水桜が丘高校)で全国高校サッカー選手権大会など6度の日本一を経験し、FIFAワールドユース(現U-20W杯)にも出場。高校卒業後、横浜マリノス(現・横浜F・マリノス)に加入し、1年目から主力として活躍して優勝に貢献。その後はスペインのレリダ、清水エスパルス、横浜F・マリノス、スペインのラシン・デ・フェロール、横浜F・マリノス、柏レイソルでプレーする。2016年シーズン途中からJ3のSC相模原の監督に就任。現在は大学生の指導に携わりながら、サッカー解説者として様々なメディアで活躍中。
19歳で将来があるからとか、マドリ―が獲得するくらい有望だからとかと、ヘタフェに言うのはおかしな話だから、普通に考えると自分で結果を出してチャンスをつかみとるしかない。
今は走行距離など細かく数値化される時代だけど、久保のポジションはゴールに直結するプレーが最もわかりやすい評価を受けるところだから、得点やアシストで万人が納得する結果にこだわらないと自分のプレーを表現するところまでたどり着かない。
その一つの手段が自分の頭を越えてしまうボールのセカンドチャンスを狙って回収する能力を上げること。予測能力を高めて自分の足下にボールを収めるための確率を上げること。ある種、ビジャレアルでレギュラー争いをすることと同等以上の難しさがある。
FC東京でも堅守速攻を経験しただろうけど、あのサッカーには再現性が担保されている部分があるし、スピードダウンしたときには久保を使うようなことが約束事になっていたから周囲も彼がどんなボールのもらい方をしたいのかを理解してプレーしていた。相互関係が築けていたし、久保の能力も周囲は認めていた。
昨シーズンのマジョルカもそうだけど、ヘタフェの選手も、久保の能力を認めてはいても「自分たちの生活水準を上げるためにボールを預けることが勝利に直結するか」という部分について信頼しているかといえば、まだそこまでではない。
だから、勝利に直結するプレーで仲間の信頼を得ること。
これが一番の特効薬! スペインはわかりやすいから。「あいつにボールを預けていれば勝たせてくれる」と思えば、手のひらを返したようにパスを回してくる。ビジャレアルでは「そのチャンスすらもらえない」と思ったからヘタフェに移籍したわけで、ゴールに直結する結果を明確に示さないといけないことは、彼自身が一番わかっている。
ゼロからゴールを生み出すことを続けていけば、周囲が変わってゼロが一、二になる。そうなれば自分が特徴を出すところに集中できる環境に変わっていく。それは監督の考えも含めて。
「奪ったらタケだ」
こうなればどんどん好循環になっていく。ヘタフェはこのスペイン1部のクラブにおいて唯一無二「ボールが空中を飛び交うスタイル」。どの下位チームも、もう少しボールを持とうとするから、ある意味結果に徹している。これだけ再現性が少ないサッカーをする中で、昨シーズンの後半戦と同じような活躍ができれば久保自身の実力の底上げが確実にできる。
いずれにしろ久保とアレニャの二枚が攻撃のリズムを作れないと、全員でのファイトスタイルに戻ることに変わりはないと思う。二人にとっても結果を出すまでの猶予期間は迫っている。きっとゴールが生まれなければ二人で一枠を争うような人選にもなっていく可能性はある。
もう時間的な猶予がない。
ここ1か月くらいは格上ばかりだから厳しい戦いが待っている。ここで結果を出すしかない。ここを過ぎる頃には監督も「これでいく」ということを決めて進むだろうし、ヘタフェは現状のままだと残留争い組と生き残りをかけた死闘を演じることになるから戦い方は100%ファイトスタイルになり、苦いシーズンで終わってしまうからね。
分析●安永聡太郎
取材・文●木之下潤
※取材は2月1日に実施
【分析者プロフィール】
安永聡太郎(やすなが・そうたろう)
1976年生まれ。山口県出身。清水商業高校(現・静岡市立清水桜が丘高校)で全国高校サッカー選手権大会など6度の日本一を経験し、FIFAワールドユース(現U-20W杯)にも出場。高校卒業後、横浜マリノス(現・横浜F・マリノス)に加入し、1年目から主力として活躍して優勝に貢献。その後はスペインのレリダ、清水エスパルス、横浜F・マリノス、スペインのラシン・デ・フェロール、横浜F・マリノス、柏レイソルでプレーする。2016年シーズン途中からJ3のSC相模原の監督に就任。現在は大学生の指導に携わりながら、サッカー解説者として様々なメディアで活躍中。