ただ、続いて対戦したアスレティック・ビルバオは、今も歴史的に見ても格上。久保がミスパスを奪って、先制点を演出したけど、その後は何もできずに１－５の惨敗を喫した。

　チームスタイルとしては同系統のファイトスタイル同士ではあるけど、ビルバオはフットボールもできる。ファイト以外で自分たちが主導権を握ってボールを動かすサッカーが、必要な場合は実践できる。ファイトスタイルが勝つための一つの手段である点がヘタフェとの大きな違いだ。

　ビルバオがスーパーカップで優勝して勢いにのっていたとはいえ、監督が交代したばかりのチームにヘタフェは５失点で大敗。これはチームの歯車がかみ合っていない現状を如実に表したものだと思う。チームがうまくいかないなか、久保はどういうプレーが期待されているか？ 

　ヘタフェは、同じ監督で何年もファイトスタイルを突き通しているから急にスタイルは変えられない。久保のチーム内の状況としてはボールがグラウンダーで足下に入る回数が少なく、いいタイミングで受けられることも少ない。

　ただ、そんな環境でも「どうやって相手に一刺しできるのか」を期待し、ボルダラス監督は久保を獲得した。そもそもボルダラスはずっとアンチフットボール的なスタイルを実践している監督だ。
 

　彼は、誰もが「チームとして丁寧にサッカーを形作っていくフットボールが高い価値観だ」とするスペインの中で、自分の仕事として結果を出すためにアンチを選択しなければならない状況もあったんだと予想できる。そのような環境下で唯一アンチフットボールを肯定してくれたのが、きっとアトレティコのシメオネ監督だったんだと思う。アトレティコは「ボールを持たないことの何が悪い」を実践して結果を出しているから。

　選手全員が、フットボールがうまいわけではないから、弱いなら弱いクラブなりの戦い方がある。ボルダラスは、そういう戦い方に自信をもって表現してきて今があるからね。ヘタフェを２部から昇格させて５シーズンに渡って１部を死守し続けているわけだから、その手腕はすごい。昨シーズンはヨーロッパリーグを戦ってアヤックスを破る快挙を果たしている。