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アマチュアではW杯予選を勝ち抜けない…プロ化を促した85年日韓戦、敗北の真相【名勝負の後日談】

カテゴリ:連載・コラム

加部 究

2020年05月25日

プロの時代が到来した今から振り返れば、想像もつかない事情が詰まっていた

日本は2点をリードされた43分に木村和司(写真)が直接FKをねじ込み、1点差に迫る。後半は惜しい場面も再三作った。写真:サッカーダイジェスト

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 しかし日本も43分に最大の見せ場を作る。正面やや右寄り、ゴールまで25mの位置でFKを獲得。木村が一言発しながらボールをセットした。
「入れたる」

 右利きの木村が狙うならニアサイドが常道だろう。だが木村はおそらくそう読んでくるGKの裏をかくことにした。

「壁があるので、GKには蹴る瞬間のボールが見えない。壁の上に浮き上がった時は、ニアへ飛ぶように見えるはずだ」

 実際GKチョ・ビュンドクは、1度左にステップを踏みかけている。ところが木村の蹴ったボールは、チョの反応とは真逆に大きく曲がり落ちた。

 1点差に迫って折り返し、日本のロッカーは「行けるぞ!」と盛り上がった。だが後半は攻勢をかけながらも、その1点が重かった。切り札の与那城を送り込んだのも残り8分、しかも代わりに退いたのは木村だった。

 逆に初戦を落とした日本は、アウェー戦でボランチの西村を外し、与那城をスタメン起用するギャンブルに出たが、同じく1点差に泣いた。

 ソウルから帰国し、東京プリンスホテルで催された解散式で森は選手たちに告げた。
「早くプロの時代が来るように、みんな先頭に立って引っ張ってくれ」

 プロの時代が到来した今から振り返れば、想像もつかない事情が詰まっていた。韓国決戦を目前になるまで国内最高のMF与那城を招集するプランが浮上しなかった。またワールドカップ予選なのに、ドイツで活躍するプロ選手が構想から外れていた。

 ドイツに留学経験を持つ森は「指導者こそ先にプロになるべき」だと考えていた。しかしこの日韓戦後に受けた代表監督続投の要請の中にプロ契約のビジョンはなく、自ら退陣を選択した。

 もうアマチュアでは戦えない。遠かった1点が限界を明示した一戦だった。(文中敬称略)

文●加部 究(スポーツライター)
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