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アマチュアではW杯予選を勝ち抜けない…プロ化を促した85年日韓戦、敗北の真相【名勝負の後日談】

カテゴリ:連載・コラム

加部 究

2020年05月25日

「韓国はエースをおとりに使い、勝ちに徹してきた」

日韓戦のロッカールーム。前半を1-2のビハインドで折り返した日本は後半、反撃を見せるが……。写真:サッカーダイジェスト

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 実は最終予選の日程を決める会議を前に、森は岡村に意見を求めている。
「ホームとアウェー、どっちを先に戦うのが良いと思う?」

 岡村は「先にアウェーで粘り、2戦目をホームで」と提案した。しかし森は最終的にホーム初戦を選択した。岡村はすでに故人となっていた森の胸中を推測した。
「先に韓国を叩き、その勢いを利用しなければ勝ち目がないと思ったんでしょうね」

 確かに生前の森は、韓国との決戦について、こう振り返っていた。
「客観的に当時の日本が韓国と10戦したら、2~3勝はできても5敗くらいするだろうと思っていました。そのくらい実力的には劣っていた。だから勝算を弾き出して、これで行けるというものはなかったですね」

 大観衆が見守る国立でのホームゲームで、序盤日本の選手たちは戸惑っていた。格上の韓国は、いつも日本戦になるとキックオフから息をもつかせぬようなプレッシャーをかけてきた。ところがボランチの宮内は「あれ?きょうはガツガツ来ないな。意外にいろんなところでボールを受けられてスーッと行けちゃう」と感じていた。宮内は続けた。

「結局韓国が出て来ないから、逆に日本も行き切れない。後から振り返れば、その辺のバランス感覚では韓国が1枚も2枚も上でした」

 勝って当然の韓国にも重圧はあった。しかも最終予選に向けて日本がふたりのアタッカーを加え、攻撃力が上がっているという情報も入っている。25分までは、むしろ日本の力を見極めるように慎重な入り方をしていた。

 だがそこから、いよいよ韓国がペースを上げ波状攻撃を繰り出すようになる。
「日本はヘディングが強い原(博実)が左ウイングの位置から中央に入り、そのスペースをオーバーラップした都並が使う。でも韓国は、エースストライカーのチェ・スノを敢えて都並が上がる日本の左サイドに残していたんです」(森監督)

 30分、右サイドに流れたチェ・スノが鋭いグラウンダーのクロスを送ると、対応したDF石神良訓のクリアが弱く、チョン・ヨンファンがダイレクトで叩き込む。さらに41分には、韓国陣内でビルドアップをする日本側のミスを突き、インターセプトしたチョ・ミングクがそのまま都並の背後で待つチェへ繋いだ。

「あのゴールは、はっきりと覚えています。韓国がカウンターを仕掛けチェ・スノに繋いだ時に、日本のDFは加藤久ひとりしかいなかった。そこにイ・テホが上がって来て決められた。研究されたな、と思いました。チェはアジアでは頭抜けた決定力を持っていた。でも韓国は、そのエースをおとりに使い、勝ちに徹してきたんです」(森監督)
 
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