サッカー史に残る世紀の番狂わせも、イタリア側の視点に立てば必然性があった
2-2、勝つしか道が開けないイタリアは、本来なら窮地に追い込まれたはずだった。アズーリが狙うカウンターは、ブラジルが攻撃に出てくることを前提としていたからだ。
だがイタリアのベアルゾット監督は、それでもブラジルが攻勢を強めてくることを読み切っていた。事実ブラジルは、この後セルジーニョに代えて、右サイドにドリブラーのパウロ・イシドロを送り込み、ソクラテスが前線にポジションを取るようになった。
「ブラジルにはブラジルに相応しい戦い方がある。我々とは明らかに異なる考え方で、それがぶつかり合うのがワールドカップだ。だからテレ・サンターナの交代策を間違いだとは言えない。しかし少なくとも私には考えられない。同点になってもブラジルは新しいFWを入れて、後ろを振り返ることもなく攻め続けて来た。だから相変わらずアズーリには多くのスペースが残されていた」
73分、イタリアがCKを得て、こぼれ球をマルコ・タルデリがボレーで叩く。するとGKの前に立っていたロッシがコースを変えてハットトリックを達成した。
「CKが上がった瞬間に、ブラジルはラインを上げるべきだった。ところがなぜかルイジーニョ(CB)はGKの隣に立っていて、僕とタルデリのふたりを相手にしている状態だった。イタリアならユースレベルでも、あんなポジショニングのミスはない。ルイジーニョがあそこに残っていなければ、僕はオフサイドだったのだから」
これでコンティは確信した。
「もう彼らは追いつけない」
確かにイタリアは、残り3分で4点目を決めているが、主審のミスジャッジで取り消された。幻の4点目を決めたアントニオーニが振り返る。
「ブラジルはこの時代で最高のサッカーをしていた。もしこのブラジルと10回戦ったら、せいぜい勝てて2回程度だろう。でもこの試合に関しては本来4-2。我々は完璧に戦術を実践し、そのくらいの差はあった」
だがイタリアのベアルゾット監督は、それでもブラジルが攻勢を強めてくることを読み切っていた。事実ブラジルは、この後セルジーニョに代えて、右サイドにドリブラーのパウロ・イシドロを送り込み、ソクラテスが前線にポジションを取るようになった。
「ブラジルにはブラジルに相応しい戦い方がある。我々とは明らかに異なる考え方で、それがぶつかり合うのがワールドカップだ。だからテレ・サンターナの交代策を間違いだとは言えない。しかし少なくとも私には考えられない。同点になってもブラジルは新しいFWを入れて、後ろを振り返ることもなく攻め続けて来た。だから相変わらずアズーリには多くのスペースが残されていた」
73分、イタリアがCKを得て、こぼれ球をマルコ・タルデリがボレーで叩く。するとGKの前に立っていたロッシがコースを変えてハットトリックを達成した。
「CKが上がった瞬間に、ブラジルはラインを上げるべきだった。ところがなぜかルイジーニョ(CB)はGKの隣に立っていて、僕とタルデリのふたりを相手にしている状態だった。イタリアならユースレベルでも、あんなポジショニングのミスはない。ルイジーニョがあそこに残っていなければ、僕はオフサイドだったのだから」
これでコンティは確信した。
「もう彼らは追いつけない」
確かにイタリアは、残り3分で4点目を決めているが、主審のミスジャッジで取り消された。幻の4点目を決めたアントニオーニが振り返る。
「ブラジルはこの時代で最高のサッカーをしていた。もしこのブラジルと10回戦ったら、せいぜい勝てて2回程度だろう。でもこの試合に関しては本来4-2。我々は完璧に戦術を実践し、そのくらいの差はあった」
またジーコをマークしたジェンティーレは、こう総括した。
「ブラジルの不幸はあまりに多くの才能が集まり過ぎたことだ。その過信が謙虚さや相手に対する敬意を忘れさせてしまったのではないか。そうでなければ、イタリアが彼らを破ることなど不可能だったはずだよ」
こうして最高傑作だったブラジルは散った。だがサッカー史に残る世紀の番狂わせも、イタリア側の視点に立てば必然性があった。
豪華タレントを最後尾で支えたオスカーは、その後来日して日産自動車で現役を終えると、監督1年目で三冠を達成している。彼が貫いたのは「1-0」の美学で、隙のないスタイルだった。
(※なおイタリア代表スタッフのインタビューは、現地在住の宮崎隆司氏に託して実現したものです)
文●加部 究(スポーツライター)