脅威だった黄金のカルテット「奇跡を起こすなら、彼らの魔法を消さなければならなかった」
イタリアが引いて守備陣形を整えた状態で、ブラジルはGKからビルドアップを始め、最後尾近く右寄りでパスを受けたトニーニョ・セレーゾが、ゆっくりと横パスを送る。だがボールはファルカンとCBルイジーニョの中間地点に流れ、抜け目なく奪い取ったロッシが2点目を決めた。
「ブラジルのDFは、細かく横に繋ぎながらリズムを掴もうとする。逆にそのリズムを壊せば、縦パスを狙いに来る。しかし縦パスは限られたコースを抜こうとするものだから、こちらは読み易くなる。その瞬間がカウンターの出発点になる」(ロッシ)
イタリア陣営は緻密な戦略を立てていた。例えばジーコと痺れるような駆け引きを繰り広げていたジェンティーレが、もし退場処分を受けた場合の対応策も描いていた。実際に前半でCBのひとり、フルビオ・コロバティが故障で退いた際にも、躊躇なく18歳のジュゼッペ・ベルゴミを送り込んでいる。
「ブラジルのDFは、細かく横に繋ぎながらリズムを掴もうとする。逆にそのリズムを壊せば、縦パスを狙いに来る。しかし縦パスは限られたコースを抜こうとするものだから、こちらは読み易くなる。その瞬間がカウンターの出発点になる」(ロッシ)
イタリア陣営は緻密な戦略を立てていた。例えばジーコと痺れるような駆け引きを繰り広げていたジェンティーレが、もし退場処分を受けた場合の対応策も描いていた。実際に前半でCBのひとり、フルビオ・コロバティが故障で退いた際にも、躊躇なく18歳のジュゼッペ・ベルゴミを送り込んでいる。
さらに1点をリードして前半を終えると、指揮官はロッシのワントップ移行を指示した。
「戦略の軸はジーコを止めること。ただし他のMF3人にも注意を怠るわけにはいかなかった。流れはこちら側にある。だがあの4人がいる限り一瞬にして変わってしまうこともある。奇跡を起こすなら、彼らの魔法を消さなければならなかった」
しかしブラジルの魔法は、消えていなかった。67分、左SBのジュニオールが高い位置でキープし、アウトカーブで逆サイドへ展開。受けたファルカンは、斜めに走るトニーニョ・セレーゾの動きにDFが釣られた一瞬の隙を見逃さなかった。セレーゾへパスを送るフェイクを入れると、そのままカットインをして左足を一閃。後に日本代表監督を務めるクールな天才が、思い切り咆哮した。
普段はローマでチームメイトだったコンティが語った。
「リーダーとしての資質を備え、中盤のバランスの取り方、攻守が切り変わる時の動き、自分がどんなポジションを取り、味方をどう動かしていくのか。すべてにあれほど無駄のない選手を見たことがない」