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【名勝負の後日談】「ジーコの技は誰にも止められない」82W杯、ブラジル最高傑作のチームはなぜ敗れたのか?<後編>

カテゴリ:連載・コラム

加部 究

2020年04月22日

ジーコのマークについたジェンティーレは言った「この試合で最も美しいプレーが私の目の前で生まれてしまった」

ジーコのスルーパスからソクラテスが決めたゴールは、W杯史に残る名シーンだ。(C) Getty Images

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 一方ブラジルの破壊力に立ち向かうイタリアサイドで最も重要な役割を託されたのが、本来右SBで身体の強いクラウディオ・ジェンティーレだった。アルゼンチン戦ではディエゴ・マラドーナをマークし、苛立たせて退場に追い込んでいた。

「私にとって生涯最高の試合だった。マラドーナを消してアルゼンチンも消えた。まだディエゴは若くて、あくまで真っ向から1対1を挑んできた」

 しかしブラジル戦を前に、ベアルゾット監督はジェンティーレに一言だけ声をかけた。
「ジーコはマラドーナとは違うぞ」

 ジェンティーレは、それで全てを悟ったという。

「ジーコ自身の上手さも脅威だが、それ以上に彼を取り巻く選手たちの能力が高かった。だからジーコ対策は、あくまで攻撃の芽を摘み取ることを主眼としなければならなかった。私はふたつのエリアに重点を置いた。ジーコが攻撃のアクションを始めるセンターサークルから10m入った地点、もうひとつはバイタルエリア、そこではジーコがファウルを取りに来る」

 ジェンティーレはジーコに手厳しい洗礼を続けた。しかし円熟の境地にあるジーコは、まったく怯まなかった。

 11分、ジーコはジェンティーレに密着されながらも、スローインを受けると右足ヒールで身体の後ろからボールを通すと、間髪を入れずに内側から追い越していくソクラテスに完璧なスルーパスを送る。シュートコースを探すのは難しかったが、ソクラテスはニアサイドを抜き試合を振り出しに戻した。

「この試合で最も美しいプレーが私の目の前で生まれてしまった。ジーコの最高の技は誰にも止められない」(ジェンティーレ)

 アズーリでは最も感性がブラジルに近かったファンタジスタのアントニオーニが言う。
「ブラジルとはまったくテクニックが違っていたから、ある程度彼らにプレーさせるのは当然だった。反面ブラジルは、ポゼッションこそがサッカーだと思っているところがあり、とにかく遅攻が多い。だから我々は引いて待ち、奪って攻めることに徹した」

 ベアルゾット監督も繰り返し「あの緩い横パスを狙え」と言い続けていた。24分、イタリアの追加点は、まさに狙い通りだった。
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