天野が意識的に取り組んできたのは、自治体との協力だ。
日本帰国後の天野は積極的に自分を売り込み、運よく採用された現在の川崎フロンターレで、スポーツ界では前例のないイベントや企画を手掛けてきた。スポーツがどう人々を幸せにするか、具体的なかたちにしていかなければ、説得力は生まれない。大きな注目を集めるには、話題性が必要だ。宇宙飛行士との生交信が目玉となる今回の大きなイベントも、天野の中ではしっかりと未来に繋がっている。日本でもスポーツが人々を幸せにしている、そんな豊かな未来にだ。
「今日は特別なんです。この子がいつも20時には寝ちゃうから」
応援用のユニホーム姿で話をしてくれた母親は31歳。胸に抱いているのは、生後10か月の赤ちゃんだ。この日は川崎市制記念試合の市民招待に当選し、バス2本を乗り継いでフロンターレのホームスタジアムを訪れていた。仕事帰りのご主人と合流して、19時キックオフのアルビレックス新潟戦を家族3人で観戦する。
フロンターレを応援しはじめたきっかけは、ご主人の一言だった。
「サッカーを知らなくても、面白いよ」
2年前には、年間シートを持つシーズンチケットホルダーにもなった。赤ちゃんが生まれてからは、スタジアム隣接のフロンパークでイベントやアトラクションだけを楽しみ、試合は観ずに帰る日もあるという。
この家族の話を持ち出すまでもなく、天野には手応えがある。0歳児からお年寄りまで、地域の人々を笑顔にして、幸せにする。そんな目標に少しずつでも近づいているという手応えだ。その一方で、先はまだ遠いという実感もある。アメリカについて語った自身の次の言葉が、今の日本に当てはまるとは思っていない。
「誰もがスポーツの価値をよく分かっていて、それが文化になっている。完全に染みついているんです」
米国留学後、日本に帰国してから、そろそろ20年だ。焦りがないと言えば嘘になる。
「今のJリーグに圧倒的に足りないのは、地域の人を笑顔にして、幸せにするための、片手間ではない仕掛けや企画の実践なんです。スタジアムを観戦のためだけの場所から、誰もが楽しめる場所にしていかなきゃ、〝にわかファン〞だって増えていきませんよ。スポーツにはすごい力があるって口先でどれだけ言っても、ちゃんとは伝わりません。実際に笑顔になれる、幸せを感じられる空間を創って、具体的なかたちにしていかないと―。もちろん、アメリカの単純な真似はできないから、必要なのは応用ですよね」
天野が意識的に取り組んできたのは、自治体との協力だ。
「フロンターレの場合は川崎市です。市に集まった税金は、市民を豊かに、まちを元気にするために使っていくわけですよ。市民を豊かに、まちを元気にというベクトルは、サッカークラブも同じです。だから市とクラブが力を合わせていけば、双方の発展に繋がります」
「今日は特別なんです。この子がいつも20時には寝ちゃうから」
応援用のユニホーム姿で話をしてくれた母親は31歳。胸に抱いているのは、生後10か月の赤ちゃんだ。この日は川崎市制記念試合の市民招待に当選し、バス2本を乗り継いでフロンターレのホームスタジアムを訪れていた。仕事帰りのご主人と合流して、19時キックオフのアルビレックス新潟戦を家族3人で観戦する。
フロンターレを応援しはじめたきっかけは、ご主人の一言だった。
「サッカーを知らなくても、面白いよ」
2年前には、年間シートを持つシーズンチケットホルダーにもなった。赤ちゃんが生まれてからは、スタジアム隣接のフロンパークでイベントやアトラクションだけを楽しみ、試合は観ずに帰る日もあるという。
この家族の話を持ち出すまでもなく、天野には手応えがある。0歳児からお年寄りまで、地域の人々を笑顔にして、幸せにする。そんな目標に少しずつでも近づいているという手応えだ。その一方で、先はまだ遠いという実感もある。アメリカについて語った自身の次の言葉が、今の日本に当てはまるとは思っていない。
「誰もがスポーツの価値をよく分かっていて、それが文化になっている。完全に染みついているんです」
米国留学後、日本に帰国してから、そろそろ20年だ。焦りがないと言えば嘘になる。
「今のJリーグに圧倒的に足りないのは、地域の人を笑顔にして、幸せにするための、片手間ではない仕掛けや企画の実践なんです。スタジアムを観戦のためだけの場所から、誰もが楽しめる場所にしていかなきゃ、〝にわかファン〞だって増えていきませんよ。スポーツにはすごい力があるって口先でどれだけ言っても、ちゃんとは伝わりません。実際に笑顔になれる、幸せを感じられる空間を創って、具体的なかたちにしていかないと―。もちろん、アメリカの単純な真似はできないから、必要なのは応用ですよね」
天野が意識的に取り組んできたのは、自治体との協力だ。
「フロンターレの場合は川崎市です。市に集まった税金は、市民を豊かに、まちを元気にするために使っていくわけですよ。市民を豊かに、まちを元気にというベクトルは、サッカークラブも同じです。だから市とクラブが力を合わせていけば、双方の発展に繋がります」