関根が心境を明かす。「慎三くんからも、『オイ、お前、落ちたぞ!』と言われました」

オーバーエイジで選出された興梠。関根への“一撃”にも、その裏には彼なりの想いと配慮が感じられる。(C)SOCCER DIGEST

アジア王者・広州恒大戦で、関根は武藤の決勝ゴールにつながるクロスを放つ。海外勢に対する強さは見せたが……。(C)SOCCER DIGEST
リオ五輪発表から9日経った柏戦のあと、関根に心境を尋ねた。
関根はまず落選を知った時のことから話した。
「実は(6月18日の)広島戦の前に、記者の方から事前に『南アフリカ代表戦のメンバーに、どうやら入っていない』って知らされたんです(発表は20日)。意外な形で、落選を知った形でした。
だから広島戦でゴールを決められて、吹っ切れたつもりだったんです。でも、なかなかチームが勝てず、苦しみました。だから、ようやくチームが勝ち出したけど、切り替えられたかと言われれば、言葉ではまだ上手く表現できない感じですね……」
オーバーエイジで選ばれた興梠慎三からも、きつい“一撃”を見舞われたそうだ。
「そのあと慎三くんがオーバーエイジに選ばれることになって。そしたら慎三くんからも、『オイ、お前、落ちたぞ!』と言われたんです。ダメ押しですよ(苦笑)」
やはり落選自体は「力不足」として受け止めているが、チャンスが限られていたことに対し、悔しさを感じているようだった。一方で、そこに届くかは分からないが、目指すべきこところは明確になった。
「もう、僕には年代別代表はなく、目指せるのはA代表しかありません。そこに絡めるように、ワールドカップで活躍するためにやっていきます。そこに向けて、浦和にひとつでも多くのタイトルをもたらすことはもちろん、世界で戦うことも目標になる」
原口元気、大迫勇也、少し遡ると長谷部誠、さらに五輪に出場したが惨敗を喫した北京五輪世代……。20代前半のオリンピック世代で悔しさを味わった選手たちが現在、日本のサッカーシーンで強烈な存在感を放っている。日本代表でも貴重な存在だ。痛みなど誰も求めていないものの、真の悔しさこそ財産になるのかもしれない。
しかし……誰もが納得する選手選考など皆無で、チームを司る指揮官の考えこそ最大に尊重されるべきだとは分かる。なにより五輪はサッカー選手にとって、あくまでも通過点にすぎない。
それでも、J1で優勝を争うチームのレギュラーを2年間務め、アジア王者を撃破する立役者となり、最も公式戦の経験を積んでいる若いアタッカーが、ある程度は報われるようでなければ、最終的には日本代表につながっていく日本サッカーの本当の意味での底上げは難しいようにも感じてしまう。
それこそ日本サッカー全体の停滞感を招いている一因が、このリオ五輪代表メンバーの選手選考の過程からも見えてくる気がする。チームづくりの「成熟」にこだわるあまり、活きのいい人材がまさに「旬」を迎えている時、年代別を含めた代表チームでプレーする機会を逸してしまっているのではないか――。
もちろん、リオ戦士たちがブラジルのピッチで躍動して快進撃を遂げ、アジア最終予選以上のインパクトを与えてくれれば――18人に“託した”たくさんの人の想いは一切の文句なしに報われる。
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)