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「僕は二重人格なんです」いつも母親の背中に隠れていた少年がファイターと化すまで【酒井宏樹のルーツ探訪/東京五輪】

カテゴリ:日本代表

鈴木潤

2021年07月29日

05年のフランス遠征がひとつのターニングポイントに

柏にはジュニアユースから9年半在籍。人間としても大きく成長した。(C)SOCCER DIGEST

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 当時、右SBには御牧考介(現・柏U-15コーチ)という卓越した戦術眼と高い技術レベル、そして抜群の安定感を持つ好選手がいたため、宏樹は左SBで起用されていた。その際、自分たちがボールを保持しているにしても、右サイドが攻めていた場合、左サイドはどうするのか。攻撃や守備の局面で、自分はどこにポジションを取らなければならないのか。そういったことを常に頭に入れながらプレーをしてほしいという考えが吉田にはあった。さらに吉田はこう続ける。

「戦術面を解決しなくても、ある程度のレベルには到達したと思います。でも、酒井は高い能力を持っている選手だから、持って生まれた能力のない人からすれば、持っている人が徹底的にやるというのは”マナー”に近いことだと思います。本人はなぜ戦術に関して細かく言われているのか、よく分かっていなかったところがあったみたいですけど」

 戦術以外に、もうひとつネックとなったのがメンタル面だった。宏樹の優しさ、純粋さはもちろん長所であり、人としては素晴らしい魅力なのだが、時にそれはピッチ上において気後れや自信の喪失、判断ミスなど、プレーに悪影響を及ぼしてしまうケースも多かった。04年から05年にかけて、吉田とともに柏U-15のコーチを務めていた酒井直樹は、そんな宏樹の精神的な弱さを「歯痒く思っていた」と話す。

 そんななか、05年のフランス遠征がひとつのターニングポイントとなる。軽い負傷を抱えたままチームに帯同した宏樹は当初、「僕は無理です」と怪我を理由にトレーニングを休み続けていた。しかし、2週間に及ぶ遠征のラストマッチとなる地中海選抜戦では、一転して自ら「出ます」と吉田に出場を志願したのだ。

 のちに9人のプロ選手を輩出する宏樹の代は、“黄金世代”の名に相応しく、中学3年の時点で選手たちは非常に高い意識を持って練習、試合に挑んでいた。試合を休むことが何を意味するのか。穴を空けることがどれほどの痛手になるのか。15歳のチームながら、すでに“プロ意識”に近い雰囲気に包まれていたため、同期の選手たちはまったくと言っていいほど欠場はしなかった。そんなチームメイトが作り出す空気に、おそらく宏樹も触発されたのだろう。
 
 地中海選抜戦の同じピッチに立った工藤は回顧する。

「前日まで休んでいた酒井が、途中から出てきて流れを変えたんです。0-2で負けていた試合を酒井の活躍で引っくり返して、3-2で逆転勝ちしました。確かアイツ、2アシストぐらいしたと思います」

 コーチとして遠征に帯同していた酒井直樹もこう言って笑みを見せる。

「怪我をしているどころか、普段以上の好パフォーマンスでした。結局、怪我ではなくて、精神的な弱さが原因だったんじゃないかと思います。でもあれ以来、帰国したあとも宏樹が元気になったという印象を受けて、僕は弱々しさが抜けてきたのかなと思いました」

 そういった様々な経験を積みながら、少しずつ弱さを克服してきた宏樹は、高校2年次には“黄金世代”の仲間を抑えて、トップチームに2種登録される。出場機会はゼロで、ベンチ入りすらなかったものの、トップチームとU-18を行き来しながら練習に励み、当時の監督・石﨑信弘(現・富山監督)からも、フィジカルコンタクトの強さ、身体能力の高さは高く評価されていた。
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