“日本人監督”呂比須ワグナーが母国で抱く新たな夢

カテゴリ:Jリーグ

沢田啓明

2015年05月29日

「僕のバックグラウンド、経験、視点を生かして、日本のサッカーがさらに発展するための手助けをしたい」

97年に日本に帰化すると、すぐに日本代表へ選出。翌年には念願だったフランスW杯の舞台に立った。 写真:サッカーダイジェスト

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 インタビューの最後に、改めて現役時代の思い出を訊くと、最も印象に残っているのは、1997年に行なわれたフランス・ワールドカップのアジア予選、イランとの第3代表決定戦だという。
 
「試合の2日前に母親が癌で亡くなり、岡田監督から『葬式に参列するために、帰国していいぞ』と言われた。でも、僕は日本代表の一員としての務めを放棄するつもりはなかった。『チームに残ります。30秒でもいいから使ってください。ベストを尽くしますから』と、監督に伝えた」
 
 この時、生涯忘れられない出来事があった。
 
「井原(正巳)さん、山口(素弘)さん……。チームメイトが代わる代わる僕のところへやってきて、励ましの声をかけてくれたんだ。涙が出るほど嬉しかった」
 
 結局、試合では63分から試合終了まで55分間プレー。3-2でイランを破り、日本代表の一員としてワールドカップ出場権の獲得に貢献した。
 
 そんな歴史を築いた彼は、現在の日本サッカーについて、どのような印象を抱いているのだろうか。
 
「日本サッカーは、組織運営などの点で世界のお手本となれる。大勢の選手が欧州でプレーしていることからも分かるように、アジアでは選手の育成が最も成功している国だ。しかし、優れた選手をもっと多く育てるやり方はあるはずだ」
 
「今の日本の選手に最も不足しているのは、気持ちの強さと自信だろう。恵まれた生活環境が災いしているのかもしれないが、日本人が持つ世界有数の勤勉さ、真面目さ、誠実さ、計画性を発揮すれば、いつかは世界の頂点に立てる。他の日本人選手とは異なる僕のバックグラウンド、経験、視点を生かして、日本のサッカーがさらに発展するための手助けをしたい」
 
 そのために、呂比須には目指すプレースタイルがある。
 
「コレクティブに守り、攻めながらも、個人のタレントを生かしていく。そんな攻撃的で魅力的なサッカーを追求したい」
 
 サンパウロ州の内陸地で8人兄弟の末っ子として生まれ、3歳で父親を亡くし、困難な少年時代を送った。苦しみながらもサッカーによって道を切り開き、地球の反対側に位置する日本に渡って成功を収めた。その笑顔の裏には、強い負けん気と激しい闘志が渦巻いている。
 
 G大阪で味わった指導者としての“挫折”を糧にして、呂比須は今、確かな道を歩んでいる。今後さらに成長し、将来再び日本サッカー界に戻り、現役時代を上回るほどの貢献をしてくれることを期待したい。

呂比須ワグナー
Wagner LOPES
PROFILE /1969年1月29日、ブラジル・サンパウロ出身。現役時代はFWで、サンパウロFCに在籍していた87年に、元ブラジル代表のオスカーに誘われて日本へ渡る。日産(現・横浜)や日立(現・柏)でプレーしてゴールを量産すると、97年に平塚(現・湘南)へ加入。同年9月に日本国籍を取得し、フランス・ワールドカップ最終予選、そして98年の本大会に日本代表の一員として出場した。その後は名古屋やFC東京、福岡を渡り歩き、02年に現役を引退。日本代表20試合・5得点。

取材・文:沢田啓明(サッカーライター)

日本のサッカーがさらに発展するための手助けをしたい――。指導者としての経験を積む呂比須は、再び日本に戻り、チームを指揮したいと願っている。 写真:沢田啓明

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