だが、この隣国の名門で入団１年目こそ11ゴールと結果を残したものの、２年目は出場機会が激減。そこで冬の市場でグラナダにレンタルで移籍し、さらに2013年夏にはセルタと契約を結んだ。
 
　セルタ行きの一番の決め手となったのが、新たに監督に就任したL・エンリケの存在だった。恩師の下で一気に才能を開花させたノリートは、その指揮官が導入したバルサ・スタイルを機能させる中核として、溌剌としたパフォーマンスを披露。ゴールを量産してエースの座を勝ち取り、さらに2014年11月にはスペイン代表デビューも飾った。
 
　L・エンリケが１年でバルサへ栄転した後も進化を続けているのは、その師匠がかつて繰り返し重要性を説いていた“自信”を掴んだからだろう。ノリートの勢いはとどまるどころかさらに増し、入団３年目の今シーズンはここまで８ゴール・５アシストとエースに相応しい活躍を見せている。
 
　ボールを持った瞬間から危険な香りを放つ遅咲きの29歳に対する評価は、高まる一方だ。いまや移籍マーケットでも人気を集め、現在は恩師が率いるバルサも再獲得を望んでいるという。はたして、カルロス・モウリーニョ会長が望むようにセルタに骨を埋めるのか、それとも新たな挑戦を選択するのか。本人の決断が注目される。
 
　ただ、どんな道を進むにせよ、ノリートの姿勢は変わらないだろう。ふたりの師から叩き込まれた反骨精神をもって、これからも前進していくに違いない。
 
文：下村正幸
 
※ワールドサッカーダイジェスト2016.01.07号より加筆・修正
 
【ノリートのPROFILE】
●本名／マヌエル・アグード・デュラン
●生年月日／1986年10月15日
●身長・体重／175cm・73kg
●クラブキャリア
2005－06 サンルケーニョ（SPA３部）：32試合・23得点
　06－07 エシハ（SPA２部B）：31試合・２得点
　07－08 エシハ（SPA２部B）：37試合・12得点
　08－09 バルセロナB（SPA２部B）：28試合・４得点
　09－10 バルセロナB（SPA２部B）：35試合・12得点
　10－11 バルセロナB（SPA２部）：38試合・13得点／バルセロナ（SPA）：２試合・０得点
　11－12 ベンフィカ（POR）：29試合・11得点
　12－13 ベンフィカ：６試合・１得点／グラナダ（SPA）＊ ：17試合・３得点
　13－14 セルタ（SPA）：35試合・14得点
　14－15 セルタ：36試合・13得点
　15－16 セルタ：15試合・８得点
●スペイン代表歴／５試合・０得点
●スペイン代表デビュー／2014年11月18日（ドイツ戦）
※記録は2016年１月15日現在　＊＝レンタル