【セリエA現地コラム】二桁順位から2位まで浮上。ユベントスはなぜ復活できたのか?

カテゴリ:連載・コラム

片野道郎

2016年01月14日

中盤が安定して前線の構成とシステムも固まる。

マルキージオとケディラが怪我から復帰し、それまで気負いが目立ったポグバも水を得た魚のように輝き出す。背番号10に恥じない局面打開を連発し始めた。(C)Alberto LINGRIA

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 下馬評では圧倒的な優勝候補に挙げられながら、開幕2連敗で大きく躓いて10月末(10節終了時点)に至ってもなお二桁順位に低迷。深刻な不振に喘いでいたのが、セリエA5連覇を狙うユベントスだ。
 
 しかし、10月31日のトリノ・ダービーで接戦を制した(○2-1)のをきっかけに、そのまま一気に9連勝。前半戦が終わってみれば、首位ナポリにわずか2ポイント差、インテルと肩を並べての2位まで順位を上げてきた。
 
 この復活の要因としては、序盤戦に続出した故障者の戦列復帰、チームの基本形の確立、そして戦術メカニズムに馴染んだ新戦力の活躍などが挙げられる。そして、これらはすべて密接に連関し合っている。
 
 不振に陥った序盤戦に、最も大きな問題を抱えていたのが中盤だった。MLSのニューヨーク・シティに去ったアンドレア・ピルロの後継としてアンカー/レジスタを務めるはずだったクラウディオ・マルキージオ、バイエルンに移籍したアルトゥーロ・ビダルの後釜として中盤にパワーとダイナミズムをもたらすべき新戦力サミ・ケディラがいずれも故障離脱。マッシミリアーノ・アッレーグリ監督はシモーネ・パドイン、マリオ・ルミナ、ステーファノ・ストゥラーロといったリザーブ組を中盤のキーポジションに起用せざるをえなかったが、クオリティー不足は誰の目にも明らかだった。
 
 10月半ば以降の復調が、マルキージオ&ケディラの戦列復帰と時期的に一致しているのは、まったく偶然ではない。
 
 マルキージオはピルロのような創造性に富んだゲームメイクはできないが、シンプルな捌きと質の高い縦パスを織り交ぜて攻撃にリズムを作り出し、守備の局面でも的確な読みとポジショニングで危険なスペースをカバーするなど、攻守両局面でバランサーとして機能している。
 
 ケディラは安定したテクニックと高いモビリティーで中盤にクオリティーとダイナミズムをもたらした。2人の不在時には独力で局面を打開しようという気負いばかりが目立っていたポール・ポグバも、同じレベルで対話・連携ができるチームメイトを得てプレーが自然体に戻り、より持ち味を発揮できるようになった。
 
 中盤がこの3人で固まったのと同時期に、試行錯誤が続いていた前線の構成もマリオ・マンジュキッチとパウロ・ディバラの新戦力2トップが定着し、さらに最終ラインもより安定感が高く、しかも両翼の攻撃力を引き出しやすい3バックに落ち着いて、やっとチームの基本形が完成した。
 
 現在の基本システムは、アッレグリ監督が開幕時に構想していた4-3-1-2とは大きく異なる3-5-2。左右のウイングバックには、ステファン・リヒトシュタイナー、パトリス・エブラという昨シーズンからのレギュラーに加えて、ファン・ギジェルモ・クアドラード、アレックス・サンドロというより攻撃的なキャラクターを持ったオプションができ、チームの戦術的な振る舞いにも幅が生まれている。
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