──都倉選手も『都倉ワイナリー』の経営者として、大変なことは多いですか？

都倉：今は高い授業料を払いながら、社会勉強をさせてもらっている立場なので、とても経営者だなんて言えないですよ。ただ、やっぱり「ノーペイン、ノーゲインの原理」だと思っていて、そこに痛みが伴わなければ得られるものも少ないんですよね。僕のようなサッカー選手が何かビジネスを始めようとすれば、多少の犠牲は伴う。でもその先に成長や気付きがあって、失敗することで次の成功への学びも得られると思うんです。

嵜本：それは、やった人にしか分からない。

都倉：でも、そもそもアスリートって、毎日の練習から失敗と気付きの繰り返しで、トライ＆エラーのサイクルが自然と身に付いているはずなんです。ただそれを、体系立てて分析できない人が多いのかな。嵜本さんも言うように、自分の可能性にフタをしてしまって、気付けないだけなのかもしれませんね。

──ワイン事業を通じて感じたり、学んだりしたことを、後輩たちに伝えているんですか？

都倉：いえ、それはないですね。サッカー選手って難しくて、一番説得力があるのは、ピッチ上で結果を出している人間なんです。年齢は関係ない。それに、僕もいろんなご縁や経験があって、ここに到達しているわけで、今、自分が感じていることとかノウハウを伝えたところで、同じような響き方はしないんです。それぞれ価値観も違いますから。「都倉がワイン事業をやっているな」って、ＳＮＳを通じて知ってもらっているくらいでいい。興味があれば、向こうから話を聞きにくるでしょうしね。

──今の20代の選手のキャリアに対する考え方は、昔とは変わってきていますか？

都倉：どうなんでしょう。たぶんそれは年齢ではなく、チームのカラーによって違ってくると思います。長崎の選手たちは、みんなすごく真面目で、純粋にサッカーに取り組んでいますね。

──練習以外の時間の使い方も変わりませんか？

都倉：たぶん、パチンコがスマホアプリに変わったくらいじゃないですか（笑）。それこそ年齢を重ねないと、時間が有限だということ自体が分からない。それが一番伝えにくいことのひとつだと思いますね。例えば「父親の死」とか、なにか大きなインパクトがないと気付けない。