「宇佐美 vs 武藤」の構図。現状は宇佐美が一歩リードするも…。
シンガポール戦で宇佐美は結果を残せなかったものの、ポジティブな材料を挙げるとすれば78分までプレーした点だろう。言い換えれば“3人目の交代までピッチにいた”ということだ。
3枚の交代カードが切られたなか、宇佐美を代えるタイミングはもっと早くても不思議はなかった。しかし、指揮官はギリギリまで引っ張る選択を下したのだ。この采配が意味するところは、「信頼」と呼ぶには尚早ながら「宇佐美への高い期待感」に他ならない。
3月シリーズの2試合はいずれも途中出場という立場だった宇佐美が、ポジション争いのライバルである武藤を差し置いて、6月シリーズでは一転して2試合連続先発。ポジションを争う候補者で両シリーズの出場時間を比較すると、宇佐美が「99分増」と最もプレー時間を延ばしている。これは裏返せば、ハリルホジッチ監督の御眼鏡に適った証拠だろう。
なにより象徴的だったのは、71分に投入された原口が柴崎と交代した点だ。ポジションの適性を考えれば、原口はサイドMFに入るのが自然。ところが、指揮官は宇佐美をあえて残したまま、原口をトップ下に配置した。采配自体は賛否両論が渦巻くが、少なくとも“宇佐美をできるだけピッチに残しておきたい”と監督が考えたのは間違いない。
現時点でウイング(またはサイドMF)の序列は、本田が不動の存在で、宇佐美、武藤、原口という順番か。もっとも、宇佐美と武藤はいつ立場が入れ替わってもおかしくない。当然、宇佐美も自身の置かれた状況は把握している。だからこそ、なによりも結果が欲しかったのだ。
「結果を出せない試合は、どんな試合でも悔しい」
シンガポール戦後に発した言葉の背景には、そうした熾烈なポジション争いも絡んでいる。仮に、宇佐美がこの日のようなプレーを続ければ、近いうちに武藤が先発の座を再び掴み取るだろう。互いに切磋琢磨を続けながら、「宇佐美 vs 武藤」の構図はしばらく続きそうだ。