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オシムのビジョン、ギドの本音…名役者が共演した90年W杯、西独vsユーゴの真相【名勝負の後日談】

カテゴリ:連載・コラム

加部 究

2020年05月11日

「初戦がユーゴスラビアと分かった段階から、この試合にピークが来るように準備した」

ユーゴスラビア戦で強烈なミドルシュートを叩き込んだマテウス。4-1で快勝した西独が優勝へと登り詰めた。(C) Getty Images

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 だが期待が膨れ上がる分だけオシムへの重圧は増した。

「戦争の足音は近づいていた。セルビア人の記者はセルビア人の選手を、クロアチア人の記者はクロアチアの選手をもっと使えと主張する。政治が絡み、複雑な状況の中で、私は出身地の違う選手たちをひとつにまとめてきたんだ」

 サッカー史の中で、両国は好対照な歴史を築いてきた。オシムが解説してくれた。

「ユーゴスラビアは、どの時代にも優れたチームを作って来た。綺麗にサッカーをするという点では、必ず世界でも3本の指に入って来た。あとはポルトガル、ロシア、フランスあたりだろうか。フランスでは、こんな言い方をするよ。芸術家は芸術家だ。つまり芸術家は、綺麗にプレーすることだけを考える。でも最も良質なチームと最高のチームは別だ」

 大会3日目、ミラノのサンシーロ・スタジアムでは、最も勝つ伝統を築いてきたチームと、最も美しく戦うチームが顔を合わせた。

 ただしより強い危機感を抱いていたのは、勝利のマインドを宿した方だった。
「組み合わせが決まり、初戦がユーゴスラビア戦と分かった段階から、この試合にピークが来るように全力で準備をしてきた」
 ギド・ブッフバルトの述懐である。

 2年前の欧州選手権で、ブッフバルトは開幕から2試合に出場したが、故障をしてオランダ戦ではプレーが出来なかった。結局終了間際にオランダのマルコ・ファンバステンに逆転ゴールを決められた一戦で、大会後にドイツのメディアは「ブッフバルトがいなかった」ことを敗因に挙げていた。

 万全の準備で臨んだ西ドイツは、序盤からゲームを支配した。一方ユーゴスラビアは、理想のスタメンについて、オシムのビジョンとメディアの要求が大きく食い違っていた。オシムは、こう言い切る。

「だから私は敢えて西ドイツ戦で、私のメンバーとは言えない選手たちを送り出した。結果は分かっていたよ」

 ただしわずか3試合しかない大事なグループリーグの初戦で、本当にオシムがそんな実験をすることが出来たのか、それは自国の記者数人に意見を求めても、軒並み「ありえない」と否定的だ。
 
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