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【名勝負の後日談】ヴェルディの天敵となった“堅守”マリノス。82セレソンの異分子がもたらした“1-0”の美学

カテゴリ:連載・コラム

加部 究

2020年04月27日

「1-0」の美学を持っていたオスカー。対して松木監督が目指したのは…

試合前の日産イレブン。水沼(一番手前)や松永(手前から2番目)、長谷川(同3番目)、柱谷(同6番目)らの顔が見える。写真:サッカーダイジェスト

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日産、そしてマリノスで10番を背負った木村和司。チームの攻撃を牽引した。写真:サッカーダイジェスト

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 そんな日産が1987年3月に読売クラブから初勝利を飾ると、プロの時代に変わる1993年11月10日まで読売(ヴェルディ)の天敵であり続けた。引き分けを挟み15連勝の通過点には、当然Jリーグの記念すべき開幕戦も含まれていた。

 清水と同じく日産加入後にFWからボランチに転向し、このポジションに注目を引き寄せた柱谷哲二が証言している。

「とにかくオスカーは1-0の美学を持っていました。手堅く失点せずにカウンターでゴールを狙う。攻められてもGK松永(成立)さんを中心にしっかりと守り、あまり攻撃には人をかけなくなりました」

 ハイテンポでの短いパス回しが得意な読売に、この戦術がはまった。逆に読売は86年に重要なふたりの選手が引退していた。ミスター読売と呼ばれた与那城ジョージと、ボランチとして特に木村和司キラーとして君臨していた小見幸隆だった。

 横浜マリノスの初代監督としてJリーグ開幕を迎える清水が「今だから言うけど」と教えてくれた。
「ジョージが引退したことで、読売のパスの出し手がラモス(瑠偉)ひとりに減った。ジョージは長短のパスもドリブルも自在。試合の序盤は、こちらがしっかりとマークしていると、後ろからロングボールを散らして出てこない。ところが少しでも隙を見せると、一気に飛び出して来る。止めようがなかった。でもラモスは5~10メートルのパスは抜群でも30メートルのパスはない。気持ち良くボールを持たせておいても、最後はワンツーに飛び込まず、3人目の飛び出しをケアしておけば良かった」

 ボールを繋がれるのは構わない。むしろ前がかりにさせ、相手の消耗を待って勝負どころで神野卓哉や山田隆裕ら若いスピードのあるFWを送り込んで決着をつける。それが日産の勝ちパターンとして定着していった。

「お互いハイレベルで神経を研ぎ澄ませて戦うから、あまり多くのチャンスは作れない。ブラジルスタイルの読売は、4バックと言いながらどうしても左SBを前に出す。つまり都並(敏史)の裏は狙い目だった」

 もちろん日産に連敗続きの読売サイドも対抗策を考えた。プロ化に向けて、当面のライバルから柱谷を獲得し、ラテン系の選手補強が続くクラブの流れを断ち切り、オランダからパワフルで格安な助っ人を補強。ヴェルディの初代監督に就任した松木安太郎は「中央突破もあれば、サイドからの崩しもある。ショートパスもあれば、長いボールを駆使した大きな展開もある」サッカーを目指した。チーム内で反感を買いながらも、大胆な変革を断行した。
 
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