【W杯アジア予選を突破した日】ドイツ行きを決めた“無観客試合” 選手たちはなぜ素直に喜べなかったのか?

カテゴリ:連載・コラム

佐藤俊

2020年04月25日

短期集中連載【W杯アジア予選を突破した日】vol.3 日本vs北朝鮮|空っぽのスタンドのように選手の気持ちは…

北朝鮮とのアウェー戦は、中立地のタイで無観客試合として行なわれた。写真:サッカーダイジェスト写真部

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 過去6度のワールドカップに出場した日本代表は、これまで5度のアジア予選を突破してきた。本稿ではそれぞれの最終予選突破を果たした試合にスポットを当て、そこにまつわる舞台裏エピソードや関係者たちの想いに迫る。(文●佐藤 俊/スポーツライター)

――◆――◆――

 過去、ワールドカップアジア最終予選を突破した試合で、もっとも異質で感情移入するのが難しかったのが、2005年6月8日のドイツ・ワールドカップ・アジア最終予選の北朝鮮戦だ。柳沢敦らのゴールで2-0とリードし、淡々と終わった試合内容もあるが、このスタジアムには本来あるべきサポーターの野太い声もファンの熱気もなかったのである。

 なぜなら、無観客試合だったからだ。

 こうなったのは、05年3月30日、北朝鮮のホームで開催されたアジア最終予選のイラン戦で審判の判定に激怒した北朝鮮の観客がピッチにモノを投げ込むなど、暴徒化したからだ。それを問題視したFIFAが北朝鮮国内での開催権をはく奪し、第三国での無観客試合とする制裁を決めた。その結果、タイ・バンコクのスパチャラサイ国立競技場での試合が決定したのである。

 異質で感情移入が難しかったと前述したが、それにはいくつかの理由があった。

 もちろん無観客というシチュエーションの影響は大きい。その時代も今も変わらず、雷神の如く響き渡るサポーターの声援は、選手の背中を押し、代表の試合を盛り上げるには欠かせないものだ。彼らはこの時もスタンドの外で声を枯らして応援していたが、彼ら不在の試合は気が抜けたシンハビールのように味気なかった。

 また、メインスタンド側には300人の日本の報道陣と50名の北朝鮮の関係者が座っていたが、それはスポーツの試合観戦というよりもコンベンションセンターで催し物を見ている感じだった。アジアサッカー連盟から「ユニホームを着て応援しないこと」という御達しが出ていたが、北朝鮮側の応援が過熱すると関係者が注意し、スタンドから数名が消えると一層、静かになった。試合はまるで練習試合のようだったが、公式戦であるべきものがない状態を見慣れていない自分たちにとっては違和感しかなかったし、選手もやりづらさを感じていたという。

 ただし、ワールドカップ出場が決まったのに、もうひとつ盛り上がりに欠けたのは、空っぽのスタンドのように選手の気持ちには心から喜べないものがあったからだ。

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