【プレーバック歓喜の瞬間】手繰り寄せた涙の逆転劇。17年の川崎初優勝の舞台裏

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2020年04月26日

涙のフィナーレを迎える

小林(写真左)と中村が抱き合って喜ぶ。ふたりとも涙を隠すことができなかった。(C)SOCCER DIGEST

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 試合はわずか46秒で阿部浩之が先制弾を奪う最高の立ち上がり。その後はややペースダウンしたが、前半アディショナルタイムに小林が加点すると、後半もペースを握る。小林は81分までにプロ初のハットトリックを記録し、得点王レースでもトップに立つ。

「(ハットトリックの後、チームメイトが)異様にはしゃいでいたので、自分は(鹿島戦で)磐田が点を取ったのかと勘違いしてしまいました。そしたら『(得点ランキングでトップだった杉本)健勇が点を取ってないからお前、単独トップだぞ』と言われて、そっちかよと(笑)。正直、得点王よりもチームタイトルが重要だったので、鹿島戦のスコアのほうが気になりました」

 実を言うと、川崎は鹿島と磐田の情報を遮断して試合に臨む予定だった。実際に鬼木達監督は試合終了までその結果を知らなかったという。

 しかし、川崎のベンチメンバーの間では「鹿島と磐田の試合は0-0で進んでいる」という吉報が回っていた。どうしても気になったという小林もベンチの仲間からジェスチャーで鹿島のスコアを聞き、「このままいってくれ」と強く願っていた。

 
 80分をすぎてスコアは4-0。川崎がほぼ勝利を手中に収めた状況下で、多くの人の意識は鹿島の動向に傾いていた。「逆転優勝を果たせるのはないか」スタンドからも徐々にどよめきが起き始めていた。

 試合終盤に表示されたアディショナルタイムは5分。同時刻にキックオフされた磐田×鹿島のスコアはまだ動かない。そして90+6分、数分前に途中出場していた長谷川竜也がGKとの1対1を制してトドメの5点目を決め、試合終了のホイッスルが鳴り響いた。

 ベンチからは控え選手が一斉にピッチへ駆け込む。一瞬、長谷川のゴールを祝っているのか、逆転優勝に狂喜乱舞しているのか分からない。だが、パソコンで随時チェックしていた磐田と鹿島の一戦は0-0のスコアから動かないまま。そして観客席からは悲鳴のような声とともに「やったぞ!」という雄叫びが響く。

 ピッチでは中村がその場で泣き崩れ、多くの選手の目には涙が溢れる。電光掲示板には「磐田0-0鹿島」の文字が浮かび上がる。悲願のJ1でのタイトルを目指し続けたクラブにとって、創設21年目でついに歴史が動いた瞬間だった。

「ルヴァンカップでも準優勝に終わり、どこかで『勝てないのは自分が原因ではないのか』と考えている部分もあった。(優勝後は)今までの出来事が走馬灯のように流れていました」と語る中村は人目をはばからず号泣し、小林は「最初は自分ひとりでぶわーっと泣いて、はっと憲剛さんはどこだろうと我に返って探したら、憲剛さんも顔をくしゃくしゃにしていて。その姿を見たら余計に泣けてきて」と、ふたりは抱き合って喜びの涙を流し合った。
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