【プレーバック歓喜の瞬間】手繰り寄せた涙の逆転劇。17年の川崎初優勝の舞台裏

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2020年04月26日

2位で迎えた最終節は…

2017年に遂に悲願のJ1制覇を成し遂げた川崎。サポーターとともに喜びを爆発させた。(C)SOCCER DIGEST

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 記者席で一瞬、戸惑った。すべての条件が綺麗に揃い、「あれ、これで優勝なんだよな?」と。

 2017年のJ1の最終節。川崎は苦しい立場にあった。首位の鹿島とは勝点2差の2位。ホームで迎えた大宮との一戦は勝利が絶対条件で、磐田と対戦した鹿島が引き分け以下に終わらなければいけない。

 シルバーコレクターと揶揄され、何度もあと一歩のところで涙を飲んできた川崎にとっては、悲願成就へまたも高い壁が待ち受けているように感じられたのだ。

 約1か月前のルヴァンカップ決勝でも辛い現実に打ちのめされていた。下馬評では川崎有利と臨んだ運命の一戦で、まさかのミスもあり、C大阪の堅守速攻のゲームプランにはまって0-2で敗戦。ナビスコカップ時代を含めて“4度目の正直”として臨んだ決勝戦で、またも頂点には届かなかったのだ。

「なぜ勝てないのか」

 打ちひしがれた川崎陣営の表情は今でも忘れられない。試合終了直後は「今はちょっと先のことを考えられない」と口にする選手が大半だった。

 小林悠は「すごく悔しかった。キャプテンだけど人に気を配る余裕はなかった」と振り返り、最終ラインのリーダー谷口彰悟も「ルヴァンでひと区切りっぽい雰囲気が出てしまった」と語る。
 この時点でリーグは残り3戦。メンタルの切り替えは容易ではなかった。それでもチームは再び前を向いて走り出す。守護神・東口順昭のビッグセーブに何度も決定機を防がれた32節のG大阪戦は、82分のエウシーニョの値千金弾で制すと、33節の浦和戦は小林の妻に捧げる“バースデー弾”で首の皮一枚をつなぐ。やや足が鈍って来た鹿島の背中を追走したのだ。

 そして迎えた冒頭の大宮戦。詰めかけた観衆は、シーズン最多の2万5904人。試合前には小林がリーグ200試合出場の表彰として家族と記念撮影し、その光景に笑顔を見せるイレブンの姿があった。大舞台でプレッシャーに押しつぶされてきたこれまでの姿とは違う――なにか特別な予感をよぎらす一連のシーンでもあった。

 ちなみに小林も「実は試合前はちょっと緊張していたんです。でも上の息子が花束を渡してくれる時になぜか泣いていて。その姿がなんだか面白くてリラックスできました。そういう意味では息子に助けてもらいました」と述懐する。
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