遠藤とシュツットガルトの岐路となったカールスルーエ戦。 (C) Getty Images
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ただし、このシステムの難しいところは、うわべだけのポジションチェンジでは、相手にとってもそこまで怖くはないという点だ。実際に、不用意にスペースを空けてしまうことで、不必要なボールロストから一気にチャンスを作られるというシーンも少なくなかった。
そこで、ウォルター監督はテコ入れを決断。カールスルーエ戦で、初めて遠藤を先発で起用した。4-3-3のアンカーでプレーした遠藤は、中盤の底で攻守のバランスを取り、的確なポジショニングからの素早いアプローチで、1対1の強さをいかんなく発揮。そして正確なパスワークで攻撃の起点にもなった。
遠藤は、監督の起用が正しかったことをピッチ上で証明した。この日の活躍で一気に先発ポジションを獲得すると、以降は連続出場。12月末にウォルター監督が退任し、ペッレグリーノ・マタラッツォ新監督に交代した後も、欠かすことのできない主力のひとりとなっている。
チームに対する責任感は、試合を重ねることに身に着くものだ。19年の最終戦となったハノーファー戦は、2-2で引き分けた。前半に遠藤のミスが失点に繋がるという痛恨のプレーもあったが、本人は消極的になることを良しとはしない。ミスはミスと認めたうえで、次のプレーへと繋ぐことのできるだけの余裕が、遠藤にはある。
「アンカーで試合に出続けるのであれば、もっと守備にフォーカスして、できるだけ多くのカウンターの芽をつぶすことを意識すべきだと考えている。それに、攻撃時にあの位置からターンして前に繋げられるような、勇気を持ったプレーが大事。今日のようなミスがあっても、大事なのは続けていくことだと思う」
アンカーとしてだけではない。2月7日に行なわれた第22節アウエ戦では、3バックの左CB、4バックの左CB、ダブルボランチの一枚と3つのポジションをこなし、どれも好パフォーマンスを披露。遠藤のクオリティーを、地元記者も絶賛していた。
そこで印象的だった出来事がある。試合後のミックスゾーンで遠藤と話をしていると、別の選手をインタビュー中の『kicker』誌記者が、こちらをチラチラ見ながら気にしていた。僕が遠藤の話を聞いた後に話しかけようとしていたようだが、タイミングが合わなかったようだ。
遠藤が去った後、彼は悔しそうに僕のところに来て、こう言った。
「彼は、今日素晴らしいプレーをしていたじゃないか。ぜひ話を聞きたかったんだけど、タイミングが合わなかったんだ。そちらの邪魔をしたくはなかったしね。良かったら、いくつか、エンドウが何を話していたか聞かせてくれないか?」