レジェンドの軌跡 THE LEGEND STORY――第46回 G・ミュラー(元・西ドイツ代表)

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サッカーダイジェストWeb編集部

2019年03月07日

チーム、個人として全てのタイトルを獲り尽くす

写真は、74年W杯の決勝進出を懸けたポーランド戦での決勝ゴール。厳しいマークを受けながらも、数少ないチャンスを確実に活かせるのがミュラーだった。ちなみに彼の太腿周りは、自転車選手並みの62センチもあったという。 (C) REUTERS/AFLO

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 バイエルンとともに栄光への階段を駆け上がったミュラーだが、その得点能力が発揮されたのは、クラブレベルだけではない。西ドイツ代表のユニホームを身に纏った彼もまた、世界の守備の名手たちに失望を与え続けた。
 
 1966年10月12日のトルコ戦で代表デビューを飾ると、翌年には68年欧州選手権予選のアルバニア戦で4ゴールを挙げ、決勝大会の出場権を獲得したユーゴスラビアからも1得点を記録して存在感を示す。
 
 続いて68年から始まった70年メキシコ・ワールドカップ予選では、9得点で母国の本大会行きに貢献。この数字は、ブラジルの名手トスタンに次いで、2番目の多さだった。
 
 そして迎えた本大会、グループリーグ初戦のモロッコ戦で決勝ゴールを挙げると、ブルガリア戦、ペルー戦と連続でハットトリック。準々決勝では前回王者イングランドを下す決勝ゴールを豪快なボレーで決めた。
 
 いまだW杯史上最高の一戦といわれるイタリアとの準決勝では、延長戦で常に先手を取られながらも、バックパスを奪ってのゴール、瞬間的に身を投げ出してのヘッド弾でスリリングなシーソーゲームを演出。決勝進出は成らなかったものの、2位ジャイルジーニョ(ブラジル)に3点差をつけ、初のW杯でいきなり得点王に輝いた。
 
 一躍、世界にその名を知らしめたミュラーは、前述の通り、この年にバロンドールも受賞。稀代のゴールマシンはその後も国際舞台でも得点を積み重ね、西ドイツが圧倒的な強さで大陸初制覇を飾った72年欧州選手権では、予選(7点)、本大会(4点)ともに得点ランキングのトップを守り切った。決勝のソ連戦(3-0)では、2点を挙げている。
 
 それから2年後、自身最後のビッグイベントとなった自国開催のW杯。ここでは得点王の座をポーランドのグジェゴシュ・ラトーに譲ったが、ミュラーは印象的な4つのゴールを決めた。
 
 1次リーグのオーストラリア戦でのヘッド弾、2次リーグのスウェーデン戦ではヘーネスのクロスをスライディングで受け、倒されたままうまく足を交差してゴールに流し込んだ。ポーランド戦では、豪雨の後のぬかるんだピッチでしっかりボールをコントロールして名手ヤン・トマシェフスキの牙城を崩し、母国を決勝戦に導いた。
 
 そしてミュンヘン・オリンピア・シュタディオン(バイエルンの本拠地でもあった)でのオランダとの最終戦では、互いにPKで1点ずつを取り合って迎えた43分、ライナー・ボンホフの右からのクロスをトラップしたミュラーは、意図的に後方に残したボールに対し、素早く戻って身体を捻りながら右足でゴールに流し込んだ。
 
 この一瞬の早業に、相手守備陣も反応できず、西ドイツは逆転に成功。その後は、クライフを中心に猛攻を仕掛けるオランダに対し、バイエルン所属のベッケンバウアー、GKゼップ・マイヤー、そしてブンデスリーガではミュラーと好勝負を繰り広げたボルシアMGのベルティ・フォクツらが鉄壁の守りを見せ、見事に世界の頂点に立った。
 
 栄光を掴んだこの年をもって、ミュラーは代表を引退。W杯通算得点14、代表通算得点68という、長く破られることのない記録を残した。今ではどちらも母国の後輩、ミロスラフ・クローゼが更新したが、後者の記録については、クローゼが68得点に達するのに129試合を要したのに対し、ミュラーは62試合でこれを成し遂げている。
 
 一方、バイエルンでのキャリアはその後も続き、79年の退団までにリーガで427試合に出場し、365ゴールを挙げた。もちろん、これも歴代最多である。現在、現役トップのロベルト・レバンドフスキですら、まだ200点に到達しておらず、こちらの記録は当分、破られることはなさそうだ。
 
 リーガ4回、DFBカップ4回、チャンピオンズ・カップ3回、カップウィナーズ・カップ1回、インターコンチネンタルカップ1回という輝かしいタイトル歴を残してバイエルンを去ったミュラーは、79年にアメリカに渡り、NASL(北米リーグ)のフォート・ローダーデール・ストライカーズで3シーズンを過ごしてから現役を退いた。
 
 引退後は、事業の失敗、アルコール中毒と、様々な問題を迎えたものの、盟友のベッケンバウアー、ヘーネスから救いの手を差し伸べられ、これらを克服。バイエルンで活動の場(コーチ)を与えられたことについて、ミュラーは「このクラブが存在したことが、私にとっての最大の幸運」と感謝の意を表わした。
 
 ドイツの英雄として尊敬された不世出の天才ストライカー。そんな彼がアルツハイマー病に罹ったという、2015年のバイエルンの発表は、世界のサッカーファンに大きなショックを与えた。しかし、仮にミュラーが自身の偉業を忘れ去ってしまったとしても、人々の記憶のなかから彼の勇姿が消えることは絶対にない。

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