ショックの色が見られたニュルンベルク戦
本人たちは油断しているつもりも、集中力を欠いているつもりもないはずだ。だが、それまで全てがうまくいっていたことで、どこか「何とかなるはずだ」という思いが出てきてしまい、緊張感や危機感が弱まっていることは否めない。
トッテナム戦での最初の失点は、まさにそうした空気で生まれてしまった。確かにこの試合では、マヌエル・アカンジ、ウカシュ・ピシュチェク、ユリアン・ヴァイグルといった主力DF選手が、軒並み欠場したのが痛かった。とはいえ、前半は秩序ある攻守でイーブンの試合展開に持ち込めていた。
トッテナム戦での最初の失点は、まさにそうした空気で生まれてしまった。確かにこの試合では、マヌエル・アカンジ、ウカシュ・ピシュチェク、ユリアン・ヴァイグルといった主力DF選手が、軒並み欠場したのが痛かった。とはいえ、前半は秩序ある攻守でイーブンの試合展開に持ち込めていた。
それが後半開始直後にアシュラフ・ハキミの軽率なミスでボールを失うと、そこからあっさりと先制点を献上。この試合から復帰したファーブル監督も、「後半開始1分での失点は、プレゼント。あそこでボールをキープするプレーをしてはならず、ボールを前に運ばなければならなかった。向こうはプレスに来ていた」と、ハキミの不用意なミスを悔やんだ。
立ち直りのきっかけに何より必要なのは勝利。ドルトムントは、その機会をニュルンベルク戦に求めた。そして立ち上がりから、ドルトムントは80パーセント近いボール支配率を記録したが、これという決定機はないまま試合は進む。
マリオ・ゲッツェが何度かフィニッシュまで持ち込む場面があったものの、GKクリスティアン・マテニアに全て防がれてしまい、最後まで点が取れないまま終わってしまった。
「勝点1は間違いなく少なすぎる。3を取らなければならなかった。勝たなきゃいけなかった」とゲッツェが振り返るなど、試合後の選手には、さすがにショックの色が見られた。
ファーブル監督はチームの現状に、「こういうことは、時々あるものだ。悪いプレーをしたわけではない。少なくとも、1点を取ることができるための十分なチャンスがあった」と試合後に語っていたが、その1点をどう取るのか、そして最後まで試合をどうコントロールするかを、再び見出していかなければならない。
23節の相手、昨シーズン途中までドルトムントの監督を務めたペテル・ボシュが率いるレバークーゼンは、ここまで4連勝中と好調だ。スピード感溢れるオフェンシブサッカーをしっかり分断することができないと、間違いなく厳しい展開になってしまうだろう。
いずれにしても、優勝を狙うチームであれば、ここを乗り越えなければならない。正念場のドルトムントが、どんなサッカーを見せるのか。注目の一戦だ。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日生まれ。秋田県出身。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2018-19シーズンからは元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU16監督を務める。「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)、「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」(ナツメ社)執筆。オフシーズンには一時帰国して「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。