ユースはあくまでもユースでしかない
ユースで頂点を争ったような選手も、その多くは「ホープ」のまま、悶々としているのだ。
ユース年代というのは危うくも、その才能の覚醒に胸が高鳴ってしまう、蠱惑(こわく)的なものがあるのだろう。
ユース年代というのは危うくも、その才能の覚醒に胸が高鳴ってしまう、蠱惑(こわく)的なものがあるのだろう。
しかし、スペインなどサッカー先進国では、ユース年代の成績だけで、その選手を過剰にフォーカスしない。「ユースはユース」という線引きがあるからだろう。プロはスピードも、パワーも違い、それまで通用してきたプレーが途端に出せなくなってしまう。
その一方で、プロの世界にしがみついて、強さや速さに慣れ、じわじわと力を発揮する選手もいる。バルサのトップで飛躍したマルク・バルトラ、セルジ・ロベルトは、まさにそのケースだろう。時間はかかったが、戦える選手として技術の高さを活かせるようになっていった。
プロの世界に辿り着いたということは、相応の実力や可能性を意味している。それをどのように活用するのか。結局は、それぞれの選手の手に委ねられている。
文:小宮 良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。