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【検証】イタリアはなぜ世界王者から予選敗退まで凋落した? 後編:連盟と育成の機能不全

カテゴリ:ワールド

片野道郎

2017年11月17日

代表レベルはともかくクラブレベルが問題。

世界制覇を果たした2006年W杯の面々。全盛期のブッフォン①をはじめ、ピルロ㉑、トッティ⑩、カンナバーロ⑤など一線級が揃っていた。(C)Getty Images

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 代表レベルでは、2010年の南アフリカW杯でグループリーグ敗退を喫した後、往年の名将アリーゴ・サッキを統括コーディネーターに迎えて、U-15からU-21まで育成各年代のイタリア代表について、スカウティングからプレーコンセプトまでを統一し一貫して行うというプロジェクトが進んできた。
 
 近年は、2016年のU-19欧州選手権で準優勝、2017年のU-21欧州選手権でベスト4、U-20W杯で3位と、7年にわたる取り組みの成果が少しずつ出つつある。ちなみに、2014年からサッキの後任としてプロジェクトの責任者を務めているマウリツィオ・ヴィシディは、かつてセリエBのクラブを率いていた当時、『ワールドサッカーダイジェスト』誌で約10年間にわたって『カルチョ解体新書』など多くの連載企画に携わってきた、日本のサッカーファンにもお馴染みの人物だ。
 
 しかし、イタリア・サッカー全体の底上げを図るためには、それだけではまったく不十分だ。問題はむしろ、クラブレベルで育成に対する取り組みが軽視されており、また育成年代のエリートがトップリーグで主力としてプレーするまでの段階的な成長と成熟のルートがシステムとして確立されていないところにある。
 
 セリエA、Bのクラブの多くは、目先の勝ち負けにこだわるために、トップチームの戦力強化に資金を投下する一方で、育成やトレーニング施設といった長期的な視点に立った投資を渋る傾向が強い。これを是正するためには、育成部門への投資義務づけや施設整備基準の引き上げといった制度的な改革が必要なのだが、FIGC(イタリア・サッカー連盟)はそうした枠をはめられるのを嫌うクラブの言いなりで、改革に踏み切ろうとしない。
 
 プリマベーラ(U-19)で育成年代を終えてプロになった若手の多くが、下部リーグにレンタルされて様々な困難に直面し、持てるタレントを十分に開花させることなく埋没していくことも大きな問題だ。これに対しては、スペインやドイツなどで行われているBチームの下部リーグ登録という解決策が何年も前から提言されているが、セリエAでもこれに積極的なのはわずか5~6クラブ、Bチームの受け入れ先となるセリエB、Cはチーム登録枠が奪われるのを嫌って反対と、今のところ実現の見通しは立っていない。
 
 大局的に考えれば、イタリア・サッカーの再生と発展にとってこうした改革が不可欠であることは誰の目にも明らかだ。にもかかわらず、当事者であるクラブが既得権にしがみついて痛みの伴う変化を拒み、FIGCもそれを許容・追認するという構造のため、処方箋があるにもかかわらずそれが実行に移されないという状況が何年もの間続いている。
 
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