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【名選手・誕生秘話】青山敏弘を"救った"ミシャとの出会い。「僕の悔しさを察して…」と明かす恩師とのエピソードとは?

カテゴリ:Jリーグ

飯尾篤史

2017年02月23日

「もっとシーズンが続けばいいのに」。そう思えたのは2006年だけだった。

2006年シーズン途中にペトロヴィッチ監督(当時)が就任。志向した攻撃的なサッカーとの相性は抜群だった。写真:田川秀之

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 うだるような暑さの中、連日の2部練習と1日おきの練習試合で鍛えられたチームは、メンバーも、まとう雰囲気もすっかり変わってリーグ再開を迎える。
 
 そのピッチに、青山は立っていた。
 
「プロっていうのは、自分という存在を見てもらう職業なので、ようやくファン、サポーターの方々に見てもらえる立場になれるんだって、それが嬉しくてしょうがなかったです」
 
 今では青山の代名詞となった「縦パス」に自信を持ったのも、この時期のことだ。
 
「練習中に(佐藤)寿人さんから『もうひとつタメてから出して』って要求されたんですけど、それを聞いていた監督が『いや、今のはアオの感覚で絶対にいい』って言ったんです」
 
 その瞬間、縦パスが武器に変わった。
 
「やっぱり、この感覚でいいんだ、これで勝負できるんじゃないかって感じました。そういうのも全部、嬉しかった」
 
 ペトロヴィッチは息子に接するように選手たちを包み込んだが、だからこそ厳格でもあった。時に厳しく叱責することもあり、最も怒られたのが青山だった。
 
 だが、それすらも嬉しかった。
 
「それまでは怒られることすらなかった。自分のために怒ってくれる監督というのが初めてだったんです」
 
 一言一句聞き漏らさず、頭に叩き込もうとする青山に、指揮官は厳しい言葉を投げかけたあと、必ずこう言った。
 
 責任はすべて私が取るから、アオは思い切ってプレーすればいい――。
 
「プロの世界って、責任を負いたくない人もいると思うんですよ。でも、一流の人は自分が責任を取る。自分もこうありたいなって思いました」
 
 2006年シーズンが終わった時、6月までゼロだったリーグ戦出場数は、19に増えていた。
 
 もっとシーズンが続けばいいのに――。
 
 冒険の続きは、翌年に持ち越された。
 
 だが、待っていたのは、思い描いたのとは異なるシーズンだった。

―――◆―――◆―――◆―――
 
 2007年12月8日、広島は京都サンガとのJ1・J2入れ替え戦に臨んでいた。J1残留を懸けて戦う仲間の姿を、青山は祈りながら見つめるしかなかった。
 
 青山がいたのはピッチでも、ベンチでもなく、スタンドだった。

「あの年はずっと苦しかった。毎試合、なにやってるんだろうって……。ロッカールームで悔しくて泣いたこともあった」
 
 2月末に行なわれたU-22日本代表の合宿でインフルエンザを患って以来、コンディションの維持に苦労した。
 
 一方、チームも相手から分析され、序盤の好調がウソのように次第に勝てなくなった。この頃はまだ「ミシャスタイル」の完成度は高くなかったのだ。
 
「ずっともがいていたけど、なにもできなかった。まだ影響力のある存在ではなかったし、五輪予選もあったから、いっぱいいっぱいで余裕がなかったんです」
 
 チームが残留争いに巻き込まれた11月、青山はサウジアラビアとの五輪予選で右足の指を骨折してしまい、ひと足先にシーズンを終える。広島のJ2降格が決まるのは、その17日後のことだった。
 
 チームを思う青山の気持ちが溢れ出たのは、契約交渉の場だった。
 
 事務所の応接室に入った青山は、1時間が経っても出て来ない。
 
「チームがなんでダメだったのか、これからどうしていくのか、整理しないと前に進めなかった。試合に出始めたばかりの小僧が強化部長に対して失礼なことを言ったけれど、クラブのことを考えて、自分なりにぶつけたつもりでした」
 
 それは21歳の若者なりの、このクラブと生きていくという覚悟であり、責任の取り方だったのかもしれない。
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