【EURO2016開催地を巡る旅】第2回:ランスとスタッド・ボラルト=ドゥルリス「フリット、炭鉱跡地、ルーヴル美術館など魅力満載!」

カテゴリ:国際大会

結城麻里

2016年03月24日

フランスでは珍しい「歌う観衆」が有名だ。

英国風スタジアムとして知られるスタッド・ボラルト=ドゥルリス。イングランド対ウェールズの「バトル・オブ・ブリテン」は盛り上がること間違いなしだ。(C)Getty Images

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 もうひとつ、やはり前述の映画にも登場した名物が、まさにスタッド・ボラルト=ドゥルリスとその観衆です。
 
 ランスには1905年にラシン・クルブ・ド・ランス(通称RCランス。現在は2部リーグ在籍)が誕生。栄華を極めた炭鉱や金属繊維工業が廃れ、失業率の高い貧困地帯になっていくなかでも、RCランスとフットボールは、いわば唯一の基幹産業として地域を支えてきました。
 
 スタッド・ボラルト=ドゥルリスは、長方形でピッチとスタンドの距離が近いというイングランド風の作り。4つに分かれたスタンドは高くせり上がり、老舗の雰囲気を醸し出しています。EUROに向けた改築も、古き良き独特の雰囲気を残したまま快適化を進める程度にとどめられました。この地がドロー後から事あるごとに話題になっている「バトル・オブ・ブリテン」(6月16日のイングランド対ウェールズ)の舞台となるのですから、盛り上がらないわけがありません。
 
 さらにもっと有名なのが、「フランスで最も温かい」と言われる観衆です。彼らはこの国の他のスタジアムではなかなか見られない、“歌う観衆”なのです。口にするのは国歌『ラ・マルセイエーズ』の替え歌である『ラ・ランソワーズ』と、歌手ピエール・バシュレが歌った『レ・コロン』(Les Corons=炭鉱住宅)の2つで、なかでも絶対的に有名なのは後者。ちなみに、こんな歌詞です。
 
北では、コロンだった/大地は石炭だった/空は地平線/人々は地底の鉱夫だった/僕らの窓は同じような窓に面し/そして雨が、僕のランドセルを濡らしていた/でも帰ってくる父さんの目はあまりに青くて/僕は真っ青な空を見たように思った……
 
 クラブシーンの試合では、試合開始直前と後半開始直前に必ずこの歌がおごそかに合唱され、地元出身ではないフランス人もジーンと胸を熱くします。炭鉱で栄えたこの地方なしに、かつてのフランス人は暖をとれなかったからです。
 
 かつて炭鉱夫たちはコロンと呼ばれる貧しい住宅に住み、地下深くに潜って顔を炭で真っ黒にしながら身を粉にして働きました。爆発事故で多くの人の命を奪われる中でも、わずかな給料でフランス経済を支えたのです。
 
 ちなみに、フランス初のバロンドール受賞者であるレイモン・コパも、ランス市からそう遠くない炭鉱町の出身で、まさにコロンから出現したフットボーラーでした。フットボールと炭鉱は切っても切れない関係にあり、『レ・コロン』も彼らのハートが込められた悲しくも強い歌なのです。
 
 すでに炭鉱は全て閉山されましたが、人々の強い意志によって「テリル」と呼ばれるボタ山や「シュヴァレ」と呼ばれる櫓(やぐら)がコロンとともに残され、このノール・パ・ド・カレ鉱山盆地は2012年にユネスコ世界遺産にも登録されました。『レ・コロン』を口ずさみながら世界遺産を訪問すれば、炭鉱夫と大地の声が静かに聞こえてくることでしょう。

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