岡崎を変えた「チームの勝利」から「俺のゴール」への意識改革

カテゴリ:海外日本人

田嶋コウスケ

2016年03月23日

ゴールへの拘りが強いからこそ指揮官の言葉が心に引っ掛かる。

華麗なゴールだが、これも岡崎のゴールへの強い思いが瞬間的に身体を宙に舞わせたのだろう。その意味では、彼らしい泥臭いゴールと何ら変わりない。もちろん、その価値の高さも。 (C) Getty Images

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 シーズン前半戦の岡崎は、「フォア・ザ・チーム」の精神を前面に押し出して戦っていた。ゴールを目指しながら、献身的な動きでチームを支える。それが自分の武器であると認識し、プレミアで成功を掴む鍵になるとも考えていた。
 
 しかし現実には、出場機会を次第に失っていく……。結果がモノを言うプレミアで、それだけでは足りないことを思い知らされたのだ。
 
 そこで、年末から頭のスイッチを「ゴール」へ切り替えた。ペナルティエリア内でフリーになれば、周りに味方がいてもシュートやドリブルを選ぶ。あるいは、球離れの悪いリャド・マハレズがラストパスを出さなければ、「ここにボールが欲しい」と怒鳴った。
 
 ハートもプレーも逞しさが増し、ゴールへの意欲もエゴも一気に高まった。それが、ここ4か月における、岡崎の最大の変化だ。
 
 気がつけば、1月13日の21節・トッテナム戦から11試合連続で先発し、レギュラーの座をガッチリ掴んだ。そして、30節のニューカッスル戦ではオーバーヘッドでのゴール!
 
 インパクトの大きさから、あれ以来、岡崎の注目度は一気に上がったが、彼からすればあの得点も、前述の意識改革の延長線上にあったに過ぎない。
 
 もちろん、アクロバティックなゴールを決めた衝撃は大きい。もし、レスターが奇跡のリーグ優勝を果たせば、このゴールはイングランドのサッカーファンのあいだで語り草にもなるだろう。
 
 しかし、日本代表FWとしては、華麗に決めたということより、1-0で辛勝した試合で決勝点を挙げたこと、自分の足で決着をつけたという事実のほうが大きい。それこそが、ストライカーとしての岡崎が目指している道だからだ。
 
 こうした経緯があるからこそ、今回の日本代表メンバー発表時にヴァイッド・ハリルホジッチ監督が発した言葉に、岡崎の心は揺れた。 
 
「本当に模範的な選手。これほどチームのために力強くプレーし、自分のことではなく、チームのことを考えられる選手は珍しい」
 
 こう岡崎を褒めた指揮官は、続けて「レスターとは違う役割を、日本代表では求めたい。ゴールを取ってほしい」と注文。そして、冗談まじりにこう語った。
 
「『レスターでの君は、守備的MF、もしくはCBだね。A代表では違うよ』という話を、岡崎にはするつもりだ」
 
 もちろん岡崎は、ハリルホジッチ監督のこの言葉をジョークとして受け止めている。監督なりの愛情表現、発奮材料とも理解している。
 
 しかし、心の片隅で何か引っ掛かるものがあったのだろう。クリスタル・パレス戦後、「ハリルホジッチ監督は何よりもゴールを求めていると語ったが?」との質問をぶつけると、岡崎は次のように答えた。
 
「もちろん、アジアではチャンスが多いので、そういうところで決めきれる選手にならないといけない。FWとしての意地じゃないけど、ゴールのことを監督に冗談で返せるようになりたい」
 
「(ハリルホジッチ監督の冗談に)笑っていられるほど、自分の気持ちはそこまで落ち着いていない。だから、ゴールを決めたい。決めて、『どうだ!』と言えるようなモノを見せたい」
 
 プレミアで戦うストライカーとして、岡崎は「ゴールを挙げる」ことの重要性や意義を強く認識するようになった。「個の力が化け物みたいな選手がいっぱいいる」という環境で培った経験、そしてフツフツと湧き出したFWとしての意地を、この予選で見せられるだろうか。
 
文:田嶋コウスケ(フリーライター)

11月のカンボジア戦では初めてキャプテンを務め、「緊張したけど、刺激になった」と語った岡崎。ストライカーのエゴを増した今回は、そのゴールで周囲に刺激を与えることが期待される。 (C) Getty Images

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