「16歳の頃から次元が違った」「何年かにひとりの天才」バーミンガム時代の同僚や元監督がベリンガムのデビュー当時を回顧。マドリーで躍動する若きMFのルーツを辿る!
カテゴリ:ワールド
2023年11月19日
13歳で書いた日誌に書かれていた内容とは?
ハーリー・ディーンは、ベリンガムがデビューしたとき、バーミンガムのトップチームにいたCBだ。傑出したタレントに、度肝を抜かれたと言う。
「練習初日からチームのベストプレーヤーだった。16歳なのにね。でも才能はあるし、考え方もしっかりしていた。そんな選手、それまで見たことがなかった。次元が違った。ワンランク上だった」
現在32歳でレディングに所属するディーンは、当時を振り返ってこう語る。
「こいつは凄いなっていう若手が出てきても、必ず何かしら足りないところがあるものだ。ジュードは違う。非の打ち所がなかった。すべてを兼ね備えていた。そこまで多くの逸材を見てきたわけではないけど、そんな俺の目にも違いは一目瞭然だった。ジュードのような選手を正真正銘のトップタレントと言うんだろう。何年かにひとりの天才だって」
ディーンの記憶は鮮明だ。
「だいたい、トップチームに上がってきたばかりの若いヤツらは、自分のことに精一杯で周りに気を配る余裕がない。とにかく自分を証明しようと必死で、振る舞いが身勝手になる。ジュードは謙虚そのものだった。足がしっかりと地について、とにかくチームのことを第一に考える。クラブを大切にして、コミュニティーとの結びつきをとにかく大事にしていた」
称賛は続く。
「若い才能が出てくると、必ず経験不足を指摘する評論家やファンがいる。でも、ジュードにその批判は通用しなかった。最初からずっとチームのベストプレーヤーだったんだから。ジュードは自分のその手ですべてを勝ち取ったんだ。あらゆる称賛に値する」
聡明さ、思慮深さ、心の強さ、自分自身に対する確信の深さ、それこそが他と明確に一線を画すベリンガムの傑出した特長だ。
「練習初日からチームのベストプレーヤーだった。16歳なのにね。でも才能はあるし、考え方もしっかりしていた。そんな選手、それまで見たことがなかった。次元が違った。ワンランク上だった」
現在32歳でレディングに所属するディーンは、当時を振り返ってこう語る。
「こいつは凄いなっていう若手が出てきても、必ず何かしら足りないところがあるものだ。ジュードは違う。非の打ち所がなかった。すべてを兼ね備えていた。そこまで多くの逸材を見てきたわけではないけど、そんな俺の目にも違いは一目瞭然だった。ジュードのような選手を正真正銘のトップタレントと言うんだろう。何年かにひとりの天才だって」
ディーンの記憶は鮮明だ。
「だいたい、トップチームに上がってきたばかりの若いヤツらは、自分のことに精一杯で周りに気を配る余裕がない。とにかく自分を証明しようと必死で、振る舞いが身勝手になる。ジュードは謙虚そのものだった。足がしっかりと地について、とにかくチームのことを第一に考える。クラブを大切にして、コミュニティーとの結びつきをとにかく大事にしていた」
称賛は続く。
「若い才能が出てくると、必ず経験不足を指摘する評論家やファンがいる。でも、ジュードにその批判は通用しなかった。最初からずっとチームのベストプレーヤーだったんだから。ジュードは自分のその手ですべてを勝ち取ったんだ。あらゆる称賛に値する」
聡明さ、思慮深さ、心の強さ、自分自身に対する確信の深さ、それこそが他と明確に一線を画すベリンガムの傑出した特長だ。
ドルトムントへの移籍が決まる直前にこんなことがあった。どうしても獲得しようと必死の攻勢を仕掛けるマンチェスター・ユナイテッドの招待を受け、トレーニングセンターを訪れることになった。当日、そこで待っていたのは、御大アレックス・ファーガソンと“キング”エリック・カントナだった。ユナイテッドからのサプライズのもてなしだ。しかし、17歳の心は動かなかった。家族と話し合って固めたドルトムント行きの決心がそれによって揺らぐことはなかった。
13歳で書いた日誌がある。イングランドU-15代表に招集されたとき、通っていた学校から言い渡された課題だ。13歳の少年が何を感じ、それをどう言葉に表現したのか。イングランド代表のトレーニングセンター「セント・ジョージズ・パーク」に到着した初日の感想だ。
「(送迎の)車から降りた瞬間、これから特別な経験が始まるんだと実感した。エントランスに向かう一歩一歩が、興奮を掻き立てる。いますぐピッチに飛び出して行きたいと、ついに気持ちが爆発した」
さらに続く。
「トレーニングキットに着替え、必要な用具を身につけてピッチに出る。キレがあって、スペクタクルなピッチだ。ヨーロッパの強豪トルコとの試合を控え、トレーニング自体はそよ風のように軽い内容だった」
「今日は金曜、長い一日だった。それでも、こうしてゆったりベッドに入り、眠りに就くことができるのだから幸せだ。ゆっくり身体を休めるその重要性を改めて認識する。これ以上のスタートがあるだろうか」
ベリンガムをここまで導いたのが家族の愛だ。
ノンリーグの選手でもあった警察官の父マークは、フットボールについての重要な決断を下す息子に常に寄り添い、助言を与え、道を示してきた。母デニーズは、一緒にドルトムントに渡って息子の身の回りの世話をした。トレーニンググラウンドに程近い、ブラッケル地区のマンションでの2人暮らしだった。
ドルトムントでのベリンガムは、熱心にドイツ語を学び、シュニッツェルを頬張り、ドイツに溶け込む努力を惜しまなかった。もっとも、すぐに打ち解け、友情を築いたのは、流暢な英語を話すノルウェー人のアーリング・ハーランドだったという事実は伏せておこう。
そのハーランドからスポットライトを奪ったのが、20-21シーズンのマンチェスター・シティ戦、チャンピオンズリーグの準々決勝だ。次代のスーパースターとして旋風を巻き起こしていたハーランドがシティを相手にどんなプレーを見せるのか、誰もが注目していた。しかし、主役の座をかっさらっていったのは、圧倒的なパフォーマンスを見せつけたベリンガムだった。イングランド中が若きMFの話題で持ちきりとなった。
このとき、ひとりほくそ笑んでいたのが、16歳のベリンガムをトップチームに引き上げ、デビューさせたペップ・クロテット監督だった。
「デビュー当時、自分が知る限りもっとも完成されたミッドフィルダーのひとりだと、彼のことを称賛した。ちょっと言い過ぎたかなとも思ったが、それがどうだ。もっと褒めちぎってもよかったな!」
現在はトルペド・モスクワを率いるスペイン人の指揮官は笑顔で続ける。
「彼とはいまでも連絡を取り合っているよ。いつかプレミアリーグでプレーすることになるだろう。イングランドのフットボールを体現したようなプレーヤーなんだから」
そうだとすれば、楽しみだ。イングランドのどこかの街角に、新しいアートが生まれることになるのだから。
文●トム・コロモッシー
翻訳●松野敏史
【著者プロフィール】
バーミンガムを中心とするミッドランズ(イングランド中部)を担当する『デイリー・メール』紙のフットボール記者。大学で英文学とイタリア文学を専攻、大学院でジャーナリズムを学び、通信社でスポーツ記者のインターンをした後、『ロンドン・イブニング・ニュース』紙のトッテナム担当などを経て2019年から現職。セリエAの熱心なウォッチャーでもある。
※『ワールドサッカーダイジェスト』2023年10月19日号より転載
「ぺレス会長はクボに賭ける」マドリーはスペイン代表逸材をバルサに奪われても久保獲得を優先と現地報道!「リーガで最高の選手の一人」
なぜ久保建英はPKを蹴れなかったのか。キッカー2人が不在でボールを持つも...指揮官が顛末を明かす「何の疑いもない」
「ワールドクラス」久保建英に贈った敵将シャビの賛辞は“リップサービス”だったのか? 内田篤人の主張「記者が聞いてるんだよね? 俺が言いたいのは...」
13歳で書いた日誌がある。イングランドU-15代表に招集されたとき、通っていた学校から言い渡された課題だ。13歳の少年が何を感じ、それをどう言葉に表現したのか。イングランド代表のトレーニングセンター「セント・ジョージズ・パーク」に到着した初日の感想だ。
「(送迎の)車から降りた瞬間、これから特別な経験が始まるんだと実感した。エントランスに向かう一歩一歩が、興奮を掻き立てる。いますぐピッチに飛び出して行きたいと、ついに気持ちが爆発した」
さらに続く。
「トレーニングキットに着替え、必要な用具を身につけてピッチに出る。キレがあって、スペクタクルなピッチだ。ヨーロッパの強豪トルコとの試合を控え、トレーニング自体はそよ風のように軽い内容だった」
「今日は金曜、長い一日だった。それでも、こうしてゆったりベッドに入り、眠りに就くことができるのだから幸せだ。ゆっくり身体を休めるその重要性を改めて認識する。これ以上のスタートがあるだろうか」
ベリンガムをここまで導いたのが家族の愛だ。
ノンリーグの選手でもあった警察官の父マークは、フットボールについての重要な決断を下す息子に常に寄り添い、助言を与え、道を示してきた。母デニーズは、一緒にドルトムントに渡って息子の身の回りの世話をした。トレーニンググラウンドに程近い、ブラッケル地区のマンションでの2人暮らしだった。
ドルトムントでのベリンガムは、熱心にドイツ語を学び、シュニッツェルを頬張り、ドイツに溶け込む努力を惜しまなかった。もっとも、すぐに打ち解け、友情を築いたのは、流暢な英語を話すノルウェー人のアーリング・ハーランドだったという事実は伏せておこう。
そのハーランドからスポットライトを奪ったのが、20-21シーズンのマンチェスター・シティ戦、チャンピオンズリーグの準々決勝だ。次代のスーパースターとして旋風を巻き起こしていたハーランドがシティを相手にどんなプレーを見せるのか、誰もが注目していた。しかし、主役の座をかっさらっていったのは、圧倒的なパフォーマンスを見せつけたベリンガムだった。イングランド中が若きMFの話題で持ちきりとなった。
このとき、ひとりほくそ笑んでいたのが、16歳のベリンガムをトップチームに引き上げ、デビューさせたペップ・クロテット監督だった。
「デビュー当時、自分が知る限りもっとも完成されたミッドフィルダーのひとりだと、彼のことを称賛した。ちょっと言い過ぎたかなとも思ったが、それがどうだ。もっと褒めちぎってもよかったな!」
現在はトルペド・モスクワを率いるスペイン人の指揮官は笑顔で続ける。
「彼とはいまでも連絡を取り合っているよ。いつかプレミアリーグでプレーすることになるだろう。イングランドのフットボールを体現したようなプレーヤーなんだから」
そうだとすれば、楽しみだ。イングランドのどこかの街角に、新しいアートが生まれることになるのだから。
文●トム・コロモッシー
翻訳●松野敏史
【著者プロフィール】
バーミンガムを中心とするミッドランズ(イングランド中部)を担当する『デイリー・メール』紙のフットボール記者。大学で英文学とイタリア文学を専攻、大学院でジャーナリズムを学び、通信社でスポーツ記者のインターンをした後、『ロンドン・イブニング・ニュース』紙のトッテナム担当などを経て2019年から現職。セリエAの熱心なウォッチャーでもある。
※『ワールドサッカーダイジェスト』2023年10月19日号より転載
「ぺレス会長はクボに賭ける」マドリーはスペイン代表逸材をバルサに奪われても久保獲得を優先と現地報道!「リーガで最高の選手の一人」
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